接客用のユニホームをまとった「Pepper」。「Pepper World 2017」にて。
[画像のクリックで拡大表示]
接客用のユニホームをまとった「Pepper」。「Pepper World 2017」にて。

 金融機関や家電量販店、飲食店など幅広い業界でロボットによる接客を見かけるようになった。接客用に使われるロボットの筆頭といえる「Pepper」は、2017年2月時点で、実に2000社以上が導入している。

 こうした接客ロボットを見ていて、思い出したことがある。筆者は工学部の学生時代、「大学生協」でレジ打ちのアルバイトをしたことがある。その時の体験だ。

 大学生協では営業時間終了の17時半間際になると、学生や教授がレジ待ちに並び、行列となるのだが、その中に駆け込みでよく買いに来る白衣を着た男子学生がいた。白衣は薬品か何かでいつも汚れていたので、化学系を専攻する学生だったのかもしれない。

 その学生がポテトチップスを買う際、必ず無料の割り箸を持っていくことに、ある時気付いた。箸が必要なお弁当を一緒に買っていくわけでもないのに。

 「素手でポテトチップスを食べて手が汚れるのが面倒なので、割り箸を使うのかもしれない」。そう思った筆者は、その学生が来店してポテトチップスを買う際、何も言わずに割り箸をそっと袋に詰めるようにした。その学生は最初、驚いた表情をしていたが、すぐにちょっと照れくさそうに会釈をしてくれた。その人の嗜好を踏まえた接客ができたと思えた瞬間だった。

スーパーマーケットでの会計のスタイルはロボットやAIで果たして変わるのか(イメージ)
[画像のクリックで拡大表示]
スーパーマーケットでの会計のスタイルはロボットやAIで果たして変わるのか(イメージ)

 翻って今のロボットやAIはどうだろうか。米Amazon.com社の「Amazon Go」のように画像認識などを駆使することでレジでの精算自体を不要にしてしまう店舗すら世の中には登場している。

 だから「その学生がポテトチップスを買った際は無料の割り箸を持って行く」という行動を捕捉し、頻度などを把握すること自体は可能だろう。しかし、その行動がどういう動機によるものなのかまで推測するのは難しいかもしれない。仮に顧客の動機を推測できたとしても、その動機を店側に把握されることを不快に思う顧客もいるだろう。

 市場調査会社のクロス・マーケティングが首都圏に住む20~79歳の男女1200人に対して実施した調査によれば、ロボットによる接客を体験したことがあると答えた人は全体の中でまだ1割にも満たない。今後、ロボットによる接客が広がっていく中で、ロボットによる“おもてなし”をどこまで実装すべきかが見えてくるのかもしれない。