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 トヨタ自動車とスズキの提携(関連記事)、ホンダと日立オートモティブシステムズがモーターの合弁会社を設立(関連記事)――。

 日本の自動車メーカーの取り組みの中で耳目を集める二つの協業は、共通のアキレス腱を抱えることが背景にある。電気自動車(EV)の開発資源をひねり出すのに頭を悩ませていることだ。自動運転やIoTなどで、クルマの開発領域が格段に広がる。開発資金が増えることへの対応に加えて、トヨタとホンダの2社の開発現場から「技術者の数が足りないし、なかなか採用できない」と頭を抱える声が増えている。選択と集中でEVを後回しにしてきた2社は今、岐路に立つ。他社との協業で、EVの開発資源を確保したい思惑が見える。

 2020年代に普及する電動車両として、再び注目を集めるEV。2社は、EVの量産に距離を置いてきた。EVが大きく普及する可能性は低いと判断。「短距離用途のコミューター」という“ニッチ”な役割に位置付けて、開発人員を抑えてきた。EVの導入を求める規制や基準がある地域以外で、“量産車”と呼べるEVを発売していない。

 代わりに2社が力を注いで多くの技術者を割くのが、ハイブリッド車(HEV)や、同車の延長にある技術で開発するプラグインハイブリッド車(PHEV)、そして燃料電池車(FCV)である。だが、これらは2020年代の自動車開発で脇役になる可能性がある。EVの開発資金と技術者の確保は、喫緊の課題になる。

 世界を見ると、HEVは「環境対応車」と言えなくなる。世界市場でトップ2の米国と中国の自動車の環境基準で、HEVは対象外になるからだ。FCVについては、低コスト化や水素インフラの課題を解決する道筋が不透明である。市場が広がるのは早くて2030年以降だろう。その間隙を縫う形で、EVが躍進する可能性が高まっている。