いよいよ今月から、「月末の金曜日は午後3時に退社しましょう」というプレミアムフライデーが始まります。が、かく言う筆者は正直なところ、テレビで報道を見る度に白けた気分を味わっておりました。「どうせウチの会社はやらない」「小売り・飲食のための客寄せ」「だって主婦だから、会社の仕事はなくても家事がある」等々。

 しかし、この記事(テクノ大喜利 「プレミアムフライデーを生かした“一億総ものづくり”に期待」)を見た時、何かが見えたのです。いえ、もっと正直に言えば、この記事を読んだ時は「余暇になお、製品開発できる!」というご意見に“いち半導体部品ユーザー氏は、なんちゅー厳しいことを仰るのだろう…”と思いました。

 そして次の瞬間、技術者の皆さんの力は記者の想像など越えるものだという現実を、自分が見ていたことを思い出しました。それは、プリント基板のネット通販「P板.com」を手がけるピーバンドットコムが行うイベント「GUGEN2016」です。

 元は同社が年に1回の電子工作コンテストとして開催していたイベントですが、スタートアップの拡大やメイカーズブームなどを受け、2013年に事業化を目指すハードウェアのコンテスト「GUGEN」に衣替えしたそうです。2016年12月に開催された同コンテストでは、プレミアムフライデーでの開発活動を先取りするような、企業課外活動組をいくつか見かけました。

 会場で「完成度が高い」と言われていたのが「アソべる車いす型ノリモノ Exo-Wheel」。開発したのは、某自動車メーカーで医療関連機器を開発しているという技術者らのグループです。クラブ活動的に空き会議室を使って始めたものの、邪魔といわれて倉庫に移って開発を続けたとのこと。終業後から未明まで(?!)を開発時間に充てたと冗談めかして説明してくれました。時速約30kmで移動する車いすで、スティック操作のほか、姿勢センサーによる体幹コントロール、筋電センサーによる指さし操作も可能で、半身麻痺などの方も操作できるとのことでした。

「アソべる車いす型ノリモノ Exo-Wheel」
「アソべる車いす型ノリモノ Exo-Wheel」
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 ただしこの製品、そもそもの開発のきっかけは「健常者に車いすに乗ってもらおう!」というもの。だから作品名が「アソべる車いす型ノリモノ」であり、スポーツモード時には、モーグルスキーのように、足腰をひねるような動きで操作ができるようになっています。このノリモノに乗りながら、インラインホッケーやバスケットボールが楽しめる、自転車やバイクの発展形といったところでしょうか。

 開発者によると、仕事柄もあり、街中のバリアフリーが進んでいないことを課題と感じていたとのこと。「いっそのこと、健常者が車いすを使うようになって車いすユーザーが増えれば、バリアフリー化も進むだろう」という発想があったそうです。運動不足が気になりつつエスカレーターに乗ってしまう筆者には、健常者に自力で動かないことを勧めてよいのだろうか、となかなか納得できない面がありましたが、面白そうというのは確かに感じました。

 しかもこれで驚いてはいけなかった!開発者は試作費用を30~40万円と安価に抑えたことを力説。フレームには汎用の棚用フレーム材を使ってコストを抑えたとのことでした。試作の段階でコスト低減を考えるあたり、某自動車メーカーの社員教育の徹底ぶりを感じました。この作品は、大賞は逃しましたが「Goodアイデア賞」を獲得しています。