下を向く必要はない――。

 東芝の技術者の皆様に、こう言わずにはいられない気持ちでいっぱいだ。経営判断のミスにより会社が窮地に陥っていることで、もし現場の技術者が顔を上げられずにいるとしたら、こんなにも悔しくて、悲しいことはない。

 東芝が窮地に陥っているのは周知の通りだ。同社は2015年の不適切会計問題を受け、同年12月に半導体メモリーと原子力の2つの事業を経営の柱に据える計画を打ち出した。しかし、それからわずか1年後の2016年末、柱の1つと位置付けた原子力事業で巨額損失が発覚。最大7000億円の損失を計上する可能性が浮上する。経営問題に揺れ続けたシャープに時価総額で抜かれるほど、同社の株価は急落した。

 債務超過の危機が迫る中で、同社は半導体メモリー事業の分社化の方針を決める(関連記事1同記事2)。足下の同事業は絶好調である。同社は2016年4~9月期に967億円の黒字を実現したが、メモリーだけで営業利益の5割を占めた。その好調な半導体メモリー事業を分社化し、株式の売却益を得ることで、債務超過を回避したい考えだ。

 東芝の屋台骨を支えてきた半導体メモリーの技術者が、今、うつむかざるを得ないとしたら、何ともやりきれない。背景を知る人に囲まれた仕事の現場では理解してもらえるかもしれないけれど、もしかしたら家族や親戚の人たちに理解してもらうのは難しいかもしれない。東芝の技術者の皆様には、ぜひ顔を上げて、胸を張っていただきたいし、そう思っていただけるような記事を書いていきたい。