10年近く前にベストセラーとなった経済書「ブラック・スワン」(日本語初版は2009年6月)。今では書籍のタイトルとしてよりも一般用語の「ブラックスワン」として使われることが増えているようで、例えば「日本経済新聞」では「実現可能性は小さいが実現すると影響が大きい出来事」などと注釈されています。

 最近は、技術メディアの記者である私もよく耳にすると感じたので、日経電子版で「ブラックスワン」を含む記事を検索してみました。年間件数は、2011年以降2016年まで順に17、9、2、8、7そして15。やはり昨年あたりから増えているようです。確かに昨年は、英国のEU離脱やトランプ米大統領の当選など、大方の予想が外れる出来事がいくつかありました。

 もっとも記者の関心は電子業界の動きにあります。記者にブラックスワンを思い起こさせたのは、韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「Galaxy Note7」の発火事故でした。同社のスマートフォンを販売する部門の利益は2016年7~9月期に急落、次世代機の発売も延期される事態に陥っています(日本経済新聞の記事)。記者は、車載機器ほど安全性が求められない民生機器の業界にブラックスワンが存在することを印象付けた、と思いました。