いきなりの私事ですみません。年末、愛知県名古屋市にある実家に帰るも、3歳になるわが子は暇を持て余し、仕方なく2人で近所の美容院に行くことにしました。ファミリールームなる別室があり、騒ぐ子供を気にせず、親子2人で髪を切ってもらえるからです。

 今は年に1~2回訪れるだけと、何とも迷惑な客をしているのですが、高校生くらいから一応20年ほどお世話になっています。学生時代はブローが終わると「巻きますか?」と聞かれ、当時流行っていた名古屋巻きにしてもらっていました(当時は“名古屋巻き”がブローの標準サービスだったようで、私が名古屋巻きキャラだったわけではありません)。ただし、ファミリールームを使うのは今回が初めて。子供が完備されたアニメDVDに魂を奪われながら散髪される中、私はシャンプー台で髪を洗ってもらいました。

 そして順調にカット、ブローが済み、施術が終わりに近づいたとき、ついに気になっていたことを聞いてしまったのです。

「あのー、オートシャンプーってまだあるんですか?」

 この美容院、私の記憶では十数年前から自動洗髪機(オートシャンプー)が設置されています。頭を洗髪台(流し)とカバーですっぽりと覆い、全方位からのシャワーの水流で洗うというものです。機器側としては「手では落としきれない毛穴の汚れが落ちる」「こすらないので髪が傷まない」「水音でリラックスできる」というのが売りのようなのですが、客側としては「くすぐったい」「手で洗ってもらう気持ちよさがない」「痒いところに手が届かない」など、あまり好評とはいえないようでした。

 あまりに使っている人を見かけないため、「もったいないわよね~」とわが家の家族(母、兄、自分)は必ずオートシャンプーを指名(?)し、手洗いだと500円もしくは1000円かかるシャンプー代をケチると、何ともセコいことをしておりました。オートシャンプーは普及に向け、当時は無料サービスだったのです。

 自分の感想としては、人の手によるマッサージ的な気持ちよさはないものの、冷静に考えると確かに汚れ落ちに不満はないし、「頭が洗車場」というか「頭の食洗機」というか「頭で噴水ショー」というか、リズミカルな水流が頭周辺を駆け回るのも、まぁ面白いよなといったところ。加えてでかい私の頭はこの自動洗髪機の口の大きさにぴったりらしく、なかなか快適でした。

 と、ちょっぴり楽しみにしてきたのに、これまでシャンプーの選択肢に入っていたオートシャンプーが今回はナシ。あまりの不人気にオートシャンプーは廃止されたのか――なんと皮肉なタイミング!世の中は、「Pepperだ」「自動運転車だ」とロボットブームに沸いているのに、まさしく街中での普段の生活の中になじむサービスロボットの先駆者であったはずの自動洗髪機が消えてしまうなんて!!(あまり自律ではないので、本当はロボットとは呼ばないのかもしれませんが)――と勝手に感慨にふけっていると、

「いえ、ありますよ。んー、使っているお客さんもいますよ」

 どうやら私の早とちりで、自動洗髪機は今なおご健在の様子。今回はファミリールームを指定したため、通常のサロンブースで行うオートシャンプーは選択肢から外れてしまったようです。「弱水流にすると、ぞわぞわしてくすぐったくてダメですよね。私なんて、途中から“強”に変えてもらいましたよ。お客さんでも“強”ファンは多いですね。ただ、髪が長い女性は後頭部がちょっと洗いにくいですかね。男性の方が向いているかもしれません」(美容師さん)。

 うーん、ご健在とはいえども、人気とは言えない雰囲気が……。あくまで感覚ではありますが、自動洗髪機はなくなることもなく、徐々に進化している感はあるものの、広く普及しているようには思えません。装置価格も高いのでしょうが、装置があっても客が選ばないなら、そりゃあまり普及しないだろうなぁと予想されます。