「人工知能融合の時代(AI X Era)が到来した!」

 2017年は、人工知能(AI)の各分野への応用が急速に進んだ年だった――。後から振り返ったときに、ICT(情報通信技術)産業に関わる多くの人が2017年をそう表現することになりそうだ。データ量と計算スピードが増し、学習が蓄積され、人工知能がわれわれの生活のすみずみまで行き届くようになっている。人工知能が生産力の向上を牽引し、AIによる産業革新の時代が訪れると、われわれ工業技術研究院IEKはみている。

 図1に、2017年のICT産業の10大トレンドを列挙した。以降では、これらの内容について順次分析していく。

図1 人工知能(AI)によりデータ蓄積、解析、体験の統合が始まる
図1 人工知能(AI)によりデータ蓄積、解析、体験の統合が始まる
資料ソース:工業技術研究院IEK(2017年3月)
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【キートレンド 1】
AIが人間とロボットの相互作用を促進、キーは音声認識

 AI時代では一部の機器または全ての機器が人間の代わりに働くようになり、徐々に日常生活に浸透していくだろう。例を挙げると、「無人コンビニAmazon Go」がある。また、生活介護型ロボットや特定の役割を果たすロボットなどもある。

 テクノロジーが無意識のうちに人体の知覚とつながるために、相互のスムーズな作用が重要となってくる。画像や音声による相互作用が最も普遍的であり、AIが進化していく際に重視される項目である。音声認識技術は、多元的な相互作用にも役に立つ。自動車のセンターコンソールやロボットなど、今後より一層人間と機器の間のインターフェースとして発達していく。

【キートレンド 2】
AIが専用チップの効率を大幅に向上

 プロセッサー(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、プログラマブルロジックデバイス(FPGA)などの進化により、高速な演算処理が可能になり、AIが使いやすくなった。IEKの予測によると、AIの発展によって、関連するハードウエアの売り上げは、2015年の8億米ドルから2025年の1740億米ドルまで伸びる。年平均成長率は56%に達する。

 特定領域の知能化は、AIを発展させていく際に重要である。確実なニーズがあってこそ、知識を深め、数理モデルを適用した計算も可能になる。部分的な知能化の測定では、AIは既に人間の知能を超えたと証明されている。現段階での技術課題は、アルゴリズムやアーキテクチャー回路設計なども含め、自ら考え、学習し、答えを導き出す「コグニティブ・コンピューティング」を低消費電力で確実に実現することである。