人工知能(AI)技術の発展が目覚ましい。台湾でも人気の研究テーマとなっており、有名企業はAI活用に全力を挙げて取り組んでいる。本稿では、台湾の公的研究機関であるITRI IEKが考える、AIのさらなる進化や産業応用のポイントについて述べる。

ブレークスルーが起こった

 AIは新しい分野ではなく、既存の技術、ツールである。AIが飛躍的な発展を遂げたのは、「アルゴリズム」「ビッグデータ」「演算能力」の3要素にブレークスルーが起きたためだ。特にアルゴリズムが「ディープランニング」と「ニューラルネットワーク」により大きく発展したことで、AIの能力は幾つかの分野で人間と同等か、もしくは人間を上回るまでに向上した。

 AIには3つの能力が含まれている。第1は、感知(Sensing)する能力である。人間のように文字が読める、画像を見て分かる、人間の言葉を聞いて分かるというのが、これに当たるsing)能力である。第2は、理解(Understanding)する能力である。内容を解釈できる、因果関係を連結できる、背後の理由が分かるという能力である。第3は、推論(Reasoning)する能力である。一定量のデータが蓄積された後、類似の課題に直面した時に、論理的推論と仮説検証ができる能力だ。

 これらの3つの異なる能力がつながり、感知、理解、推論を一気通貫で実現できるようになったのは、クラウドコンピューティングにおける演算能力の高速化のおかげである。また、巨大で複雑なビッグデータを学習に使えるようになったことも、AIの発展と活用に大きく貢献している(図1)。

図1 AIの共通フレームワーク
図1 AIの共通フレームワーク
出所:ITRIが各種資料を基に作成(2017年5月)
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