米Apple社は2015年9月10日(日本時間)のイベントで、スマートフォン(スマホ)「iPhone 6s」シリーズ、タブレット端末「iPad Pro」、テレビ向け配信端末「Apple TV」、スマートウオッチ「Apple Watch」を発表した。また、イベントでは披露しなかったが、タブレット端末「iPad mini 4」をイベント終了と同時に発売した。これら新製品を、製造の角度からの情報ということで見ると、表に出てくる情報量が圧倒的に多いのはiPhoneシリーズだ。

 iPhoneのサプライヤーが集積する台湾のメディアや金融機関のレポートには、発表前のうわさの段階から、部品や原材料の受注情報はもとより、アセンブリを受注したHon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕やPegatron社(和碩)といった台湾系EMS(電子機器受託製造サービス)が、新型iPhone製造用にワーカーを何人増員し、基本給はいくらで、フォックスコンでは人手が集まらずに困っているものの、それでもタトゥーを入れている人は雇わないというような話まで出てくる。

 製品が発売されると今度は、すぐさま調査会社や修理業者が分解にかかり、部品や製造のコストを割り出す。調査会社の米IHS社もiPhoneのコスト分析に熱心な企業の一つで、今年も、発売から4日後の2015年9月29日には早くも、5.5型iPhone 6s Plus(16Gバイトモデル)の製造原価を236米ドルと弾き出してみせた。

 このように、iPhoneは発売前も発売後も製造にまつわる話に事欠かない。一方で、同じApple社の製品でも、iPhone以外の製品は、発売前の観測の時点では、どの企業がアセンブリや部品を受注したか、という話は出てくるものの、いったん製品が発表されてしまうと、製造にまつわる話はほとんど出なくなってしまうのが常だ。

 ところが、9月に発表された製品の中で、iPhone以外としては珍しく製造に関するうわさが出たものがある。それはApple社初の大型タブレットとして登場した12.9型のiPad Pro。このアセンブリの受注を巡って、フォックスコンの郭台銘董事長、Pegatron社の童子賢董事長、台湾Quanta Computer社(広達電脳)の林百里董事長、台湾Compal Electronics社(仁宝電脳)の陳瑞聡総経理の4社ではいずれもこれらトップが出陣してし烈な受注争いを展開したというのである。

Apple社初の大型タブレット「iPad Pro」
Apple社初の大型タブレット「iPad Pro」
写真:Apple社
[画像のクリックで拡大表示]