この連載の6回前、すなわち「『ドヤ顔戦略』が明暗分けた中国スマホ市場」の回で、数年前、「中国のアップル」ともてはやされ飛ぶ鳥を落とす勢いだった中国Xiaomi社(小米)のスマートフォン(スマホ)の失速が目立ち、代わって中国OPPO社(欧珀)、中国Vivo社(歩歩高)が中国市場で台頭し始めた、ということに触れた。そして、3社が失速、躍進した背景の一因に、中国で国民の消費力が一段ランクアップし、スマホも1000元(1元=約15.2円)前後の入門機から、2000元以上のミッドレンジ~ハイエンドが売れ始めている中、入門機が成長を支えてきたXiaomi社が勢いを失い、ミッドレンジ以上が中心のOPPO社、Vivo社が伸びる環境が整ってきたことがあると説明した。そして、安いものを買うのであれば自宅でネットでポチればいいが、少し値の張るものを買うならば、店舗で実際に手に取り、ためつすがめつしてじっくりと品定めした上で、ブランドのロゴのついた紙袋でもぶら下げながら、「買ったぜ」とドヤ顔をしながら出てきたいというのが中国の消費者の心理であり、こうしたことがネット販売が中心のXiaomi社、販売の9割を実店舗が占めるOPPO社、Vivo社の浮沈につながっているということを書いた。

 この原稿を発表してから1カ月後の2016年7月28日、米International Data Corporation(IDC)社が発表した同年第2四半期のスマホ世界出荷統計で、Xiaomi社は前期同様、世界トップ5への返り咲きを果たせなかった。これに対してOPPO社は2260万台、シェア6.6%で4位、Vivo社は1640万台、シェア4.8%で5位と、前期比でそれぞれ順位を守った他、OPPO社は1.1ポイント、Vivo社も0.3ポイントといずれもシェアを拡大した。

 成長の勢いが続いていることを示して見せたことで、中国ではOPPO社、Vivo社に対する関心がさらに高まり、メディアやアナリスト、業界人による両社に対する分析もさらに増えた。こうした中で、販売の最前線に立つ代理店の社長たちの声を取り上げたものがチラホラ出てくるようになったのだが、これが面白い。ネット販売に押された苦しい時代を支えてくれたOPPO社に恩義を感じた販売代理店の社長らがいま、同社のスマホを売りまくる原動力になっているというのである。