数年前からネットで時折、「出す出す詐欺」という有難くない呼び方をされるODM(Original Design Manufacturer)企業がある。台湾Inventec社(英業達)のことである。

 Inventec社と言えば、日本では東芝(Toshiba)をはじめとするノートパソコン(PC)の受託製造業者として名前が通っていた。しかし、PCの成長が頭打ちになった近年、同社もパソコン依存からの脱却を図り、ここ数年はスマートフォン(スマホ)やデータセンター用のサーバー製造で実績を上げている。このうちスマホでは、2017年4~6月期に世界シェア5位(米Strategy Analytics社調べ)に返り咲いた中国Xiaoi社(小米科技)、データセンター用サーバーでは米Microsoft社や米Apple社、中国のIT大手Baidu社(百度)、Alibaba社(阿里巴巴)の受託製造企業として名前が挙がることが多い。

 ではなぜ同社は、出す出す詐欺などという不名誉な呼ばれ方をすることがあるのかというと、同社の地元である台湾のメディアに、「Inventec社がApple社と組んで開発した新製品を間もなく投入する」、という記事が過去数年、年に1~2度載るということが続いていたからである。

 私が記憶している限りでは、Inventec社のこの手の記事が初めて出たのは2014年のこと。台湾紙『蘋果日報』が同年11月18日付で、「Inventec社とApple社が新製品で密謀」という刺激的なタイトルを付け、両社が秘密裏にまったく新しい製品を開発中で、2015年に発売するとの観測が台湾業界に浮上していると紹介。カテゴリーはスマートホーム関連であり、発表されれば皆が思わず「ワォ!」と驚きの声を上げにいられないような製品になる、とInventec社の内部関係者が話している、と伝えたのだ。