このコラム、すっかりご無沙汰してしまっていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。私は大学で電気・電子分野の教育・研究に携わっていますが、研究テーマをハードからAIなどソフトの分野に急速に変えようとしており、ドタバタしているうちに記事を書く頻度が下がってしまいました。細々とでもこのコラムは続けていこうと思っておりますので、これからも宜しくお願いします。

 ハードからソフトへ、モノづくりからサービスへという変化は色々な場面で実感します。電機メーカーがハードの売り切りビジネスをリストラし、よりインフラなどのサービスに移る。学生たちの意識も変わってきています。研究室選びの時に、私の研究室を志望する学生たちは、以前はLSIの回路設計などハード志向が強かったのですが、今ではソフトに興味がある学生の方が多くなりました。

 またソフトやサービス重視ということは、よりユーザーに近づくわけで、単に技術を作ればよいというわけではなく、ユースケースの理解が大切になります。従って、本稿のタイトルにもなっているMOT(技術経営)の重要性もより一層増すことになります。

 こういったハードからソフトへの転換は、半導体、テレビ、液晶、パソコン、携帯電話機・・・と日本のハードビジネスが負けてしまったからだけではないと思います。今までエレクトロニクスやITの進展の原動力であったムーアの法則、トランジスタの微細化が限界を迎えつつあることも、変化を後押ししているのではないでしょうか。

 12月の上旬に、電子デバイス分野のフラグシップの学会であるIEDM(International Electron Devices Meeting)に参加してきました。以前のIEDMと言えば、トランジスタの微細化に関する論文発表が主でしたが、ムーアの法則が終わりつつある現在、発表される論文の分野が随分変わりました。

 微細化の論文が減った分、医療向けのセンサであったり、機械学習を高速化・低電力化する技術であったり、脳の機能を模擬した脳型LSIであったり、多種多様な応用に向けたLSIの技術が最近のIEDMでは発表されるようになってきました。