「大学で学んだことは役に立たない」 「ペーパーテストの成績は仕事とは無関係」 「スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグは大学中退だ」 「MBAを取っただけではビジネスはできない」 「博士は使えない」。

 国の財政状況の悪化や少子化もあり、今後の大学のあり方について様々なことが言われています。大学がこのままで良いのか、大学自身が自らを問い直す必要があることは言うまでもありません。また、学校で学ぶことと仕事の現場が異なることは、多くの方が実感していることでしょう。せっかく大学院で学位を取ったとしても、仕事を始めたら期待したほど即戦力ではなかったなど。

 だからと言って、学歴は不要とまで言うのは言い過ぎではないかとも思います。特に危険だなと思うのは、すでに社会で活躍している方が、「自分は東大を出たけれども、学校で学んだことは何の役にも立たなかった」などと仰るのを鵜呑みにすること。

 こういうことを仰る方自身は高学歴である場合が多いと思うのですが、もしその教育を受けなかった場合にどうなったか、自分で判断することは誰にとっても簡単ではありません。人生はやり直せませんから。また、以前の終身雇用を前提とした日本の大企業では、自社の中で人を育てることを重視してきたこともあり、大学で何を学んだかはさして重視されていなかった面もあるかもしれません。

 入試を突破したという意味で学歴はその人の優秀さを示す「シグナル」として評価しても、スキル自体は社内で教える。また終身雇用を前提とした人の流動性が少ない組織では、その組織特有のスキルが相対的に重要になりますが、そういったスキルは社内でしか学べない。その結果、大学入試を突破することは大事だけれども、その後に大学で学んだかどうかは評価されない、という面もあったでしょう。