半導体の製造に巨額な投資が予定されている割にはデバイス・プロセスの技術は不足しているわけで、エンジニアの需要も多い。一方、日本には半導体の工場は数えるほどしか残っていません。日本で現在、半導体のデバイスエンジニアを一番採用しているのは、皮肉なことに、一度は倒産した旧エルピーダメモリ、現マイクロンジャパンのようです。

 日本から半導体の製造の撤退が相次いだ時、多くの日本人の半導体の製造を専門とするエンジニアが韓国や台湾に移って行きました。そして今、彼らは中国に向かおうとしているのです。

 半導体の設計では、分野を変えて異業種で活躍される方が目立ってきました。自動車の電子化が進み、自動車関連の企業も半導体のエンジニアを採用するようになってきました。また、先ごろGoogleが深層学習のアクセラレーターのASICを自社で開発、実用化したと発表しました(関連URL )。日本企業でもITサービスの差異化のためにセンサーやセキュリティーなどの半導体の設計を手掛ける企業も出てきました。

 こうした異業種への転職では、半導体メーカーのように半導体の開発・製造自体を目的とするよりも、半導体はあくまでも本業の製品、サービスを実現するための手段という位置づけです。自社で半導体を開発することにメリットがあれば自社開発するし、そうでなければ外部の半導体メーカーからLSIのチップを購入すればよい。

 半導体メーカーに居た時にくらべると、転職先では新しい分野を学ばなければいけないでしょうし、半導体に対する考え方を変える必要もあるでしょう。

 大学への転職も事情は似たようなところがあります。私は2007年に東芝から大学に移りました。自分が担当していたフラッシュメモリー事業は急成長をしていましたが、大学に移ると半導体への風当たりが大変厳しいことに驚きました。当時は日立、三菱電機、NECなどが半導体から撤退しようとしていました。そしてエルピーダメモリの倒産、ルネサス エレクトロニクスのリストラと、半導体分野のイメージは最悪でした。

 半導体を中心にした研究もはや続けられない、と判断してソフトウェア、サービスに近い分野に研究テーマを転換しました。大学の研究室は研究資金を集める点、学生に興味を持ってもらう点でも、社会の動向と極端に違うことをするのは難しいのです。学生にとっては就職先を見つけることは重要ですから、いくら教育・研究と仕事は違うと言っても、学生の就職が難しくなってしまうような研究をするわけにはいきません。