以前でしたら事業を転換する時はエンジニアに新分野の技術を再教育し、社内で配置転換することで雇用を守ろうとしました。しかし企業自身に余裕がなくなってきており、事業と一緒に社員をリストラすることも珍しくありません。

 話は少し変わりますが、私が企業から大学に移った時、企業出身の大学の先生に挨拶に伺った時に言われたのは、 「君は企業では調和を重視する草食系だったかもしれないけれど、肉食系に変わらなければ大学で生き残れないよ。」 「それを知らないで企業から移って来た人には、ノイローゼになる人も居ますよ。」

 最初は何のことだかわかりませんでしたが、大学で研究を行うためには自分で資金を集めなければいけないのです。研究資金として一般的な科研費で3倍程度、大型のファンディングでは場合によっては数十倍もの厳しい競争に勝ち残れなければ資金は得られないのです。まさに肉食系でなければ生き残れません。

 大学の世界をよく知らずに移って来た私には大きな驚きでした。しかし、後悔先に立たずで、どうにもなりません。自分が変わって、大学で生き残るしかないのです。その結果、私が肉食系に変われたとは今でも思えませんが、七転八倒しながらやっています。

 大学と同じとは言いませんが、企業のサラリーマンでも似たような状況になってきているのではないでしょうか。大手電機メーカーでは早期退職が頻繁に行われています。大企業で働いていた方が第2の人生で小さい組織に移る場合も多いでしょう。

 しかし、大企業でやってこれたのだから、小さいところ「なんて」と思ったら大間違いです。大企業では間接部門がしっかりしていますし、多くの場合、仕事も分業です。一方、小さな組織に移ったら、今まで以上に多種多様な役割を果たす必要があるのです。それを理解できない人はやっていけません。

 大企業の中でも特に主力事業で大人数で仕事をしていると、どうしても細分化した一部だけの業務になりがちです。会社もエンジニアに対して、狭い領域を深く掘り下げることを求めます。それで定年まで勤め上げられれば良いですが、外に出たら厳しいです。