2016年も電機業界は激動の1年になりそうです。まず経営危機が伝えられるシャープや東芝がどうなるのか。特に手元資金の枯渇が心配されているシャープは3月末に5100億円ものシンジケートローンの返済期限が迫っています。破綻を回避するには早急に再建案をまとめなければいけないと言われています。

 シャープ再建のために官民ファンドの産業革新機構が出資を検討しているとも伝えられています。その一方、台湾Hon Hai Precision Industry社(ホンハイ)のテリー・ゴウ董事長が、時価総額2000億円程度のシャープに対して7000億円もの巨額な金額で買収を提案しているとも報道されています。

 ホンハイはiPhoneやiPadなどのApple製品の製造を受託することで成長しました。ホンハイの資金が潤沢だとしても、時価の3倍もの価格でシャープを買収するというのは普通ではちょっと考えられません。政府系のファンドでもこれほどまで好条件の買収提案は難しいのではないでしょうか。

 ホンハイのゴウ氏には自分が経営すればシャープを立て直せる、という自信があるのでしょう。「シャープは本来はもっと高い価値があるのに、現状は潜在力を引き出せていない、何をやっているんだ」とバカにされているような気さえします。

 弱肉強食のエレクトロニクス業界でホンハイを創業し、時価総額が3兆円を超えるまでに成長させたテリー・ゴウ氏。技術や市場の変化が速く、グローバル競争が厳しいエレクトロニクス業界ではゴウ氏が率いるホンハイのように肉食系でなければ生き残れない、ということでしょう。

 肉食系でなければ生き残れないのは企業だけでなく、その中で働くエンジニアも同様ではないでしょうか。年功序列・終身雇用というシステムが機能しているうちは、企業が個人を守ってくれました。しかし、いまや多くの大企業では事業を変えながら生き残りを図っています。