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HOME新産業異業種連携華麗なる技術者 > どんな科学的大発見も、そのままでは世界を変えられない

華麗なる技術者

どんな科学的大発見も、そのままでは世界を変えられない

徹底して「ゼロから1」にこだわるバイオ研究者、佐藤匠徳氏(最終回)

  • 加藤 幹之=米Xinova 上級副社長兼日本総代表
  • 2017/10/19 05:00
  • 1/3ページ
国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 佐藤匠徳特別研究所 特別研究所長の佐藤匠徳氏を紹介するコラムの最終回。米国で大きな成果を上げ、順風満帆の研究者生活を送っていた佐藤氏は、なぜ日本に拠点を移したのか。コラム筆者の加藤幹之氏との対談で、佐藤氏が語った自身を研究に突き動かしている源泉とは。
加藤氏(左)と佐藤氏(写真:加藤 康)

今は、米国に研究の出稼ぎに来ているだけなんだ

加藤 米国で大きな成果を上げて活躍していたにもかかわらず、日本に帰ってこようと思ったのは、なぜですか。

佐藤 22歳で研究をするために米国に行ったわけですが、40歳前後になるに従って「このまま、僕はずーっと研究のために米国にいて、米国に骨を埋めるのかな」と思い始めたんです。永住権は取っていたので永住はできるんだけど、では米国籍を取るのかと。選挙や投票ができるようになるわけで。

 そう考えた時に、日本の国籍を捨てなければならないんだと思いました。それで何のために米国にいるのかを自問自答した。よくよく考えると、米国が好きなわけではないし、米国人が大好きでもなくて、「研究がしやすいから」というのが米国にいる最大に理由だったんですね。むしろ日本は好きでした。

 そういうことを考えていた時に、下村さん(下村脩さん、2008年ノーベル化学賞受賞者)がノーベル賞を受賞しました。ずーっと米国で研究されていた方です。下村さんが日本のメディアのインタビューで「日本では、なかなか研究は難しい。僕は永住権がありますから、これからも米国で研究します。でも、市民権は必要ない。米国には研究をするためにいるんです」という趣旨の話をなさっているのを拝見しました。

 僕はそれを聞いた時、「自分はちょっと違うな」と思ったんです。「今は、米国に研究の出稼ぎに来ているだけなんだ」と。確かに米国では研究はできるし、お金も稼げるけど、「米国が好きなわけではない」というのは米国人からするとあまり好ましくないのではないかと感じたんです。米国を日本に変えたら、日本人としては嫌じゃないですか。

 そういうことを考えているうちに、日本に帰るべきだなと。「日本に帰ったら研究しにくくなる」「足を引っ張られる」など、いろいろな話は耳にするんですが、それを受け入れても研究者である前に一人の人間として日本に戻るべきだと僕は感じました。

加藤 なるほど。様々な思いの中で帰国を決めたということですね。

佐藤 では、どこに帰ろうかと思った時、周囲にいろいろと聞いてみて、東京大学や京都大学のようなところは、僕はあまり好きではない。新しいところが好きですから。そこで、奈良先端科学技術大学院大学という比較的新しい大学があると聞いて、2009年に移りました。

 国立大学なのですが、僕はかなり特別扱いしてもらって、聞いていたほど研究できなくなるような環境ではありませんでした。いろいろな装置も買ってもらえたし、コーネル大学の秘書も一緒に雇ってくれるということでしたし。研究費も取りにくいと聞いていたけれど、大きな研究費もすぐにいただけた。

 よくよく考えると、やはり僕は、ちょっと悲しんですけど、外国人枠なんですよ。プロスポーツの外国人選手枠とかと一緒で。だから、日本人研究者とは違う部類として評価されているんだと思います。

加藤 でも、それは米国での業績があるからと考えれば。

佐藤 ただ、実際に帰ってくると、聞いて理解していたつもりではありましたが、やはり大学はなかなか難しいなと思いました。そうした時に、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の元社長から声をかけてもらいました。「ATRは、主に情報(IT)系の基礎研究所だけれど、分野は何でもありで、君のように研究者として外から資金を持ってくれれば、何でもやっていいから」と。

 その後にJSTのERATOに採択されて、それをきっかけにATRに移りました。特別研究室を作ってくれるだけではなく、マウスを飼育する施設から遺伝子やヒト関連の倫理委員会まで全ての環境を整えてくれました。今は、25人くらいの研究室で研究を進めています。

加藤 佐藤さんは、ERATOの研究成果の事業化を目指す医療バイオ系のベンチャー企業「Karydo TherapeutiX株式会社」も立ち上げています。これから、研究をどういう方向に持っていき、どのようにしていきたいと考えているのでしょうか。

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