DCサーバーに太陽光電力を投入

 住宅よりも規模の大きい事業所でも、太陽光の直流電流を直接、最終負荷に活用する動きも出てきた。データセンターを運営するさくらインターネットは2015年8月10日、北海道石狩市で出力200kWの「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」を稼働した(図2)。

図2 出力200kWの「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」
図2 出力200kWの「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 通常、このクラスの太陽光発電所は、高圧配電線への系統連系となるため、敷地内にPCSと昇圧変圧器が据え付けられている。太陽光パネルが出力する直流電流をPCSで交流に変換し、6.6kVに昇圧して高圧配電線に送電するためだ。

 だが、「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」の敷地には、高圧連系のためのこうした大掛かりな電気設備がなく、広々としている。実は同発電所で発電した電気は、FITによって売電せずに、約500m離れた「石狩データセンター」に直流のまま送電し、同センター内のサーバーを運用するための電源として自家消費している。

 さくらインターネットが太陽光発電の直流をそのまま活用するシステムを導入した背景には、既に石狩データセンターに「高電圧直流(HVDC)給電システム」を導入していたことが大きい。HVDCシステムとは、商用の交流電力をサーバーで活用する際、AC/DC変換を従来システムの3回から1回に減らすことで電力の利用効率を上げる仕組みだ。

 データセンターでは、電力系統の停電や瞬停に備え、UPS(無停電電源装置)の導入が必須となる。UPSに内蔵する蓄電池は直流で入出力する。最終的な負荷であるサーバーも心臓部のマザーボードは直流で情報処理するが、サーバ自体はまず交流を受ける設計になっている。従って、一般的なデータセンターでは、商用の交流を受電し、UPS内で直流に変換後、交流に戻す「AC/DC/AC」処理を行う。出力された交流は、各サーバー内の電源ユニットが再び直流に変換する「AC/DC」処理をし、マザーボードに供給する。

 一方、HVDCシステムでは交流を受電し、直流に変換後、直流分電盤を介して直流の集中電源装置から「DCサーバー」に電力を供給する。「DCサーバー」とは個別の電源ユニットを持たない製品で、直流12Vを直接入力する(図3)。蓄電池は直流回路につなぎこむ。

図3 個別の電源ユニットを持たず、直流12Vを直接、入力する「DCサーバー」
図3 個別の電源ユニットを持たず、直流12Vを直接、入力する「DCサーバー」
(出所:日経BP)
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