ソニーが12年振りに「aibo」を出し、ロボット事業に再参入した。aiboは、同社が「本質」へ回帰したことを意味するのか。元ソニーの「出る杭」社員にして、著書「ソニーをダメにした『普通』という病」で同社へ痛烈なダメ出しをした筆者が考察する。

aiboを10年待っていた

図1 12年振りに復活した「aibo」
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図1 12年振りに復活した「aibo」

 ついに、やっと、ソニーが「aibo」を出した。前世代「AIBO」の生産中止以来、12年を経てのロボット事業再参入である。

 2017年3月期の連結営業利益の見通しは、6300億円(2017年10月31日発表)。最高益更新が視野に入ってきた今、絶妙のタイミングで登場するロボット犬をソニー復活の象徴とする見方も少なくない。

 10年前、私は「ソニーをダメにした『普通』という病」(以下、ソニダメ)という本を書いた。ビジネスの本質に最も迫れていた企業であるソニーが、本質から遠い「普通」の企業になったと指摘して、既に始まっていたソニーの低迷は一過性のものではないと主張したのである。その後、低迷が長期化するにつれ、ソニーにダメ出しする本や記事が相次いだ。

 今となっては、10年に及ぶソニーの長期低迷を世界に先駆けて予見したことになるその本の中で、私は、ロボット事業撤退を批判し、継続を訴えた。ならば、再参入が果たされた今、沈黙しているわけにはいかないだろう。

 本当にソニーは復活するのか?「本質オタク」ならではの、本質ベースの考察をしてみたい。ソニーを熱愛するいちOBとして、ソニーの復活と、ソニーにワクワクする世界の復活を願いつつ。

消費者重視は本質的に正しい

 2017年5月に開催された2018年度の経営方針説明会。ソニーの平井一夫社長は、10年連続赤字だったテレビ事業が2014年度に黒字化したことなどを挙げ、「長年苦戦が続いたコンスーマーエレクトロニクスが再生し、安定した収益貢献が期待できる事業となった」とした。

 続けて、こうも述べている。「数年前は、『コンスーマーエレクトロニクス』という産業そのものの将来性に懐疑的な見方もありましたが、『コンスーマーエレクトロニクスにイノベーションはある。一歩も引かない』と言い続けた」(ソニーの経営方針説明会資料から)※。

※ソニーでは伝統的に消費者を「コンシューマー」ではなく「コンスーマー」と言う。

 このコンシューマー重視、すなわち消費者重視の姿勢は、商品価値の本質に迫るものに他ならない。商品価値の本質とは対価を伴う価値であり、全ての対価はもともと消費者が支払うものである。全ての商品価値は、消費者にとっての価値であるからだ。