ソニーが12年振りに「aibo」を出し、ロボット事業に再参入した。aiboは、同社が「本質」へ回帰したことを意味するのか。元ソニーの「出る杭」社員にして、著書「ソニーをダメにした『普通』という病」で同社へ痛烈なダメ出しをした筆者が考察する。

 前回まで、ソニーが消費者重視の姿勢に回帰したことから、再び本質に迫れてきたと書き、その消費者重視が本物であると述べた。一方で、本質に迫り切れているわけではないと付言した。今回は、本質に迫り切れていないソニーを掘り下げる。

aiboは家庭用プリンターと同じなのか?

 2017年度の経営方針説明会(2017年5月)で、ソニーの平井一夫社長は、「リカーリング型事業」を強化すると述べた。2015年度に35%だったリカーリング型事業の売上高比率は、今年度には約40%を占める見通しという。

出所:ソニー
出所:ソニー

 リカーリング(recurring:繰り返し)型事業とは、継続的な収益を生む事業である。消費者が繰り返しインクを買う家庭用プリンター事業が典型例だ。そして、家庭用プリンター事業が、高いインクを買い続けることを余儀なくされる消費者から概して評判が良くないように、リカーリング型事業の中には評判のよろしくないものがある。

 そうした背景からソニーのリカーリング型事業強化に警戒する声がある中で、同社はaibo事業もこのリカーリング型事業に位置付けている。aibo事業がクラウドなどによる付加サービスの継続的な収益を生むからだ。

 しかし、その位置付けは本質的に正しくない。

消費者が買うのは、商品ではなく「商品価値」

 ここで、商品価値というものを再び本質的に捉え直してみよう。

 本質的には、消費者は商品を買っているのではない。消費者は、商品が頭の中に生む“商品価値”を買っている、すなわち、商品価値の対価を支払っている。

 だから、本質的に消費者は、商品が自分の頭に中に生む商品価値が増えたら、その分、支払う対価を増やさなければならない。

 ところが、通常、消費者は商品価値ではなく商品を買っているつもり、すなわち、商品の対価を支払っているつもりになっている。よって、後に商品が自分の頭の中に生む商品価値が増えても、その分の対価を追加で支払うことはない。