陸上競技の器具は会場備え付けが基本

 ニシ・スポーツで最初に教えていただきましたのは、基本中の基本。陸上競技の公平性を示す最大のポイントである1つのルールです。競技大会において選手は、原則として競技場に設置されている用具を使用する、という規則です。ふだん練習で使っている自分専用の用具、例えば“my砲丸”などは使用禁止だというのです。

 あの五輪メダリスト、室伏選手のハンマーでさえ、測定や微調整を限りなく繰り返した末に出来上がった同氏専用の用具だと思ったらそうではなく、競技場にあって他人も使うハンマーなのです。

 以前本コラムで掲載したテニスゴルフでは、アスリートがスキルによって用具を変えるのが常識でしたし、選手にフィットした用具がパフォーマンスの上で極めて重要です。ところが、用具の差によって勝負が決まってしまうという一種の“不公平さ”は、陸上の世界には存在しないというのです。最初は聞き間違いではないかと、何度も繰り返してお聞きしてしまいました。

 陸上競技の用具と一口に言っても、ルールブックによれば、以下のように大きく2種類に分かれます。

1.競技記録に関わるもの(直接選手が使う)…選手が自分でふだん使っているものは禁止。競技場に設置されているもののみ(一部例外あり)

2.競技運営に必要なもの…棒高飛びのマット,支柱など

 1も2も、公的な物です。完全な私物はスパイクとユニフォームのみ。ただ、棒高跳びのポールは種類が非常に多いため、例外だそうです。