注文の多いライダー

 「ヘルメットは改良しても、それが果たして安全面で効果がある改良だったのか否かは、事故後に判断する以外に方法はありません。だから、前例がなく今まで見たこともない画期的な効果のあるシステムが突然出現するなんてことはあり得ません。できることは、実績と事実を細かく見直して、ここをチューンナップしてみれば少しプラスになるかもしれないというポイントを見つけ出し、少しずつ改良を続けていくことしかないのです。それがひいては全ての成長につながるのです。だからこそ、日々の小さな努力を続けていくことが大事ですし、それが全てなのです」。

 安全性の追求に対して妥協することのない理夫社長自身が、“最も注文の多いライダー”です。「これができれば、次はこれもできるはず」と課題は尽きない。それに応える形で、社員のチャレンジ精神も養われ、前へ前へと進めるようになるのでしょう。

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 今年定年を迎えられる社員の方に、アライヘルメットでの半生を振り返っていただきました。約40年前の入社試験で英語の面接を担当した社員は、一見外国人のように見える端正な顔立ちの方でした。当時のことですから、面接を受けた新入社員は「一中小企業が役員に外国人を雇っているとは、なんて進歩的な会社だろう!」と感激し、入社を決めたのだそうです。その英語の面接担当者こそ、現在の理夫社長だったのです。

 「自分の人生で何よりの幸せは、新井理夫社長の下で仕事ができたこと、これに尽きる」とおっしゃいます。アライヘルメットは小さな会社でしたが、理夫社長は世界を目指していたので、英語を重視した入社試験を実施していました。

 社長もそうですが、入社された社員も、失礼ながら何て勇気のある方々なのだろう、と驚いてしまいました。定年を迎えて本当に幸運だったと実感なさっているのですから、会社の居心地の良さも含めて、アライヘルメットの魅力的な一面をうかがい知ることができます。

 思えば、筆者が初めて会社訪問させていただいた時の第一印象こそが、アライヘルメットの全貌を語るものだったと思います。枯渇することのない情熱とぶれない使命感を持つライダーをトップに戴き、それに共感し尊敬する社員が一丸となって、チームアライは成長し続けていると確信しました。今後、この精神を引き継ぐ3代目、4代目が、アライという幹を太く枝を濃くしていくことを、心から願いながら、このストーリーを終わります。

写真:アライヘルメット
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写真:アライヘルメット