「ヘルメットを科学する」第4回の今回は、ヘルメットの衝撃性能試験について解説します。

人頭模型にヘルメットをかぶせて落下させる

 衝撃吸収性の評価試験は、人頭模型(ヘッドフォーム)にヘルメットを装着し、規定の高さから落下させて、衝撃加速度(G)やその継続時間などを計測し、さらにシェル(帽体)やライナーがどの程度の損傷を受けるかを調べます。

 人間の脳は300Gを超える衝撃を受けると、致命的な傷害を受ける危険性があるといわれます。人頭模型単体にヘルメットなどを何も被せずに、30cmの高さから厚さ10mmの合板ベニヤ板の上に落下させると、衝撃加速度の計測値は400Gを超えます。

 アライヘルメットは、JISとSNELLの両規格はもちろん、アライ独自の規格を設けて、それを満たしているかどうかをさまざまな試験で毎日確認しています。加速度計を組み込んだヘッドフォームにヘルメットを装着させた上で落下させ、平面または半球形のアンビルに衝突させるのです(図1)。

図1 ヘルメット衝撃性能試験の様子
写真:アライヘルメット
図1 ヘルメット衝撃性能試験の様子
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図1 ヘルメット衝撃性能試験の様子
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 試験は2回実施します。その2回とも、ヘルメットの同じ場所を衝突させます。落下させる高さは、JIS規格では1回目が2.5m、2回目が1.28m。SNELL規格では1回目が3.06m、2回目が2.35mです。ただし、これらの高さは衝撃時の速度を得るための理論値なので、実際にはそれよりも高い位置からヘルメットを落下させます(図2)。

図2 ヘルメット用の落下衝撃試験機
図2 ヘルメット用の落下衝撃試験機
元図出所:製品安全協会「安全基準作成調査報告書(乗車用ヘルメットの安全性に関する調査)」、1999年、宇治橋貞幸「スポーツ工学講義資料」(東京工業大学)所収
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