10. アテネ五輪(2004年)

 「ファーストスキン」をさらに進化させた「ファーストスキンFS2」が登場。そして前回に紹介した、北京五輪のLRへと進化していきました。

*1 前回のコラム「世界記録を量産した水着」は、こちら

11. 北京五輪(2008年)

 世界記録を量産したLRを英Speedo社が開発(図14)。詳細は前回紹介しましたので、割愛いたします。

図14 北京五輪(2008年)時の「レーザーレーサー」(英Speedo社)
図14 北京五輪(2008年)時の「レーザーレーサー」(英Speedo社)
Grant George Hackett選手(オーストラリア)  (写真:ゴールドウイン)
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12. ロンドン五輪(2012年)

図15 ロンドン五輪(2012年)時の「ミズノGX水着」
図15 ロンドン五輪(2012年)時の「ミズノGX水着」
モデル:ミズノスイムチーム 寺川 綾 選手
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 ロンドン五輪の日本代表公式ウエアはミズノとデサント、アシックスの3社でした。この3社は日本水泳連盟から代表選手への水着供給メーカーとして以前から指定されていましたが、北京五輪でこの3社の製品ではなくLRを着用する選手が続出した一件から、水泳の競技用ウエアはほぼ自由競争になり、各社の実力が問われるようになりました。国内3社にとってロンドン五輪は雪辱戦の舞台となりました。

 ミズノは、適度な伸びのある布帛(ふはく、縦糸と横糸による織物)の水着素材を採用しました。ニット生地(糸を曲げて形成した結び目によって生地としての構造を維持する)に比べて伸長させるのに大きな力を必要とする素材で、ウエスト周りを締め付けて骨盤を支持し、体幹を安定させてフラットな姿勢へと導くことを意図しています(図15)。水着の形状はハイカットとハーフスーツの背開き付き、同じく背開きなしの合計3種類を設けて、種目や好みによって選択可能にしました。さらに、軽量化を図るとともに着脱を容易にして、30分以上を着脱に要した北京五輪時の水着の課題をクリアしました。

 以上、1964年から2014年までの水着の変遷をざっとご覧いただきました。これらの進化により、記録はどのくらい短縮されたのでしょうか。この点について、次回お届けします。

■参考文献
日本オリンピックアカデミー編, 『オリンピック事典』, 三栄社, 2008年.
日本オリンピックアカデミー編, 『21世紀オリンピック豆事典』, 楽, 2004年.
城島栄一郎ほか, 「水着と競泳記録の関係」, 『実践女子大学生活科学部紀要』, 2011年.
松崎 健, 「競泳水着における表面形状と抵抗」, ミズノ.
佐藤次郎, 『東京五輪1964』, 文春新書, 2013年.
競泳水着クラブ( http://plaza.rakuten.co.jp/dressing/ )