4. モントリオール五輪(1976年)

図4 モントリオール五輪(1976年)時の水着
図4 モントリオール五輪(1976年)時の水着

 2つの革命的進化があり、現在の競泳水着の原型となりました(図4)。ポリウレタン(PU)弾性糸の開発(ナイロン80%、ポリウレタン20%)により、縦横2方向への伸縮が可能になりました。肩甲骨を避けた肩紐形状(レーサーバックスタイル)になり、首回りの空きも小さく、腕の動きやすさも格段にアップしました。

5. ロサンゼルス五輪(1984年)

図5 ロサンゼルス五輪(1984年)時の水着
図5 ロサンゼルス五輪(1984年)時の水着

 水が背中に滞留しないように開口部を設けて水の抵抗を減らし、運動性が向上しました(図5)。日の丸ワッペンが、JAPANのロゴプリントに変わりました。ハイレグも登場しました。

6. ソウル五輪(1988年)

図6 ソウル五輪(1988年)時の水着
図6 ソウル五輪(1988年)時の水着

 東レとミズノが新素材「アクアピオン」を開発しました(図6)。アクアピオンは、超極細のナイロン繊維(直径が従来の1/2)とポリウレタン弾性糸を高密度に編成した素材です。水着表面を平滑化し、凹凸が従来の1/2になったことにより、素材表面の摩擦抵抗が約10%も少なくなりました。フラットな縫製も低抵抗に貢献しました。

 さらに、水着開発の方法が、それまでとは全く違うフェーズに入りました。従来の着用評価は選手の感覚に頼るだけでしたが、このときから流水抵抗を測定するなど、科学的アプローチを取り入れた本格的な低抵抗性実現の時代が始まったのです。

7. バルセロナ五輪(1992年)

図7 バルセロナ五輪(1996年)時の水着
図7 バルセロナ五輪(1996年)時の水着

 見た目が大きく変わりました(図7)。ハイレグのカットがより高くなったことで、脚部の運動性は増しました。素材は、新開発の「アクアスペック」。ソウル五輪の「アクアピオン」の表面平滑性をさらに向上させた素材です。

 新素材開発に当たって、当初は「アクアピオン」より細い繊維をより高密度に組み立てることを検討したそうですが、水抜け性に問題があって強度も低下するため、ポリエステル(PE)に特殊加工を施すことになりました。具体的には、「アクアピオン」に使用されたナイロンよりやや太いポリエステル繊維を使用し、ポリウレタンと交編した生地を熱プレスで圧縮加工したのです。

 その結果、「アクアピオン」に比べて生地は薄くなり、表面の凹凸は約1/2と小さくなり、水との摩擦抵抗は約5%減少しました。