2020年オリンピック(五輪)・パラリンピックの招致が決まった、「トウキヨ」のあの瞬間。テレビでは関係者が狂喜乱舞する映像が流れてきましたが、もともと開催地にはそれほど興味を持てずにいました筆者は、あまり感情移入できませんでした。むしろ、5年後に一体何をしているのだろう、とそんなに遠くない自分の未来に思いをはせておりました。

 ただ、バラエティーに富んだプレゼンターの顔ぶれと主張が、審査員のみならず、視聴者の心を魅きつけたのは確かです。豊かな表情やオーバージェスチャーを混じえたパフォーマンスには、数え切れないリハーサルのあとが見えて、その努力と真摯な姿勢が多くの心を共感のゾーンへ誘ったと思います。

 東京決定には熱くなれずにいた筆者でしたが、その後、父とのふとした会話がきっかけで、気持ちが一変しました。

 「2020年のオリンピックを、ぜひ観戦したい」

 父に限らずシニア世代との会話に2020年オリンピックの話題がのぼると、皆さん異口同音におっしゃいます。「それまで元気に生きて、人生2度目の東京五輪を見たい」と。

 個々人にとって何に価値を置くかはそれぞれ異なりますから、励みになる存在もそれぞれにあるのが当然です。しかし、特にシニア世代の人にとっては、オリンピックは生きる上でのマイルストーンや夢になり得るのです。こんなイベントが他にあるでしょうか。競技者でも、関係者でもなく、一観覧者が我が事のように喜び、それを糧に生きる時間を長く深めようという気持ちになれるなんて。

 オリンピックが持つもう一つの意義と、開催地の重要性に気づき、遅ればせながら東京決定の喜びを実感できるようになりました。