軽量化を目指したクラブ材料の進化

 本コラムの主題は、プレーヤーのパフォーマンスに影響をあたえるテクノロジーの進化ですが、ゴルフにおいては、以前お話した「ガッティーボール」を生み出したテクノロジーの貢献は多大と言えます*1

*1 ガッティーボールについては「飛距離を伸ばすゴルフボールのディンプル」を参照

 なぜなら、ボールがよく飛ふようになってプレーの面白さが深まり、さらにボールを含む道具が安価になって、貴族や上流階級に限らず商人や農民にも広がり、大衆の遊びへとなる大きな変化をもたらしたからです。イギリスにおいては、1870年代に約34あったコースが、その20年後の1890年代にはなんと400コースに増えたそうです。

 ボールと同様、ゴルフクラブにももちろん進化はありました。クラブを構成するヘッドとシャフトのうち、ヘッドは現在ではチタンが主流ですが、これまでパーシモン(木)から金属製になり、さらにチタンへと変化(主にドライバー)してきた経緯があります。シャフトは、現在主流なのはカーボン(炭素繊維強化素材)ですが、ヒッコリー(木)からスチール、そしてグラスファイバー強化素材、カーボンへと進化してきました。こうして高性能のクラブが実現できるようになりました。

 その背景には、より遠くに飛ばすことを目的に、新素材の開発に拍車がかかったことが挙げられます。1970年ころのFRP(繊維強化樹脂)の出現が画期的でした。このころガラスやカーボン(炭素)の、ミクロン単位のきわめて細い繊維の製造と工業化が可能になり、その軽量さと強度の高さを生かして、スポーツ用具に採用されるようになったのです。

 今日、FRPには、ガラスや炭素繊維だけでなく金属・アラミドなどさまざまな繊維が強化材として利用されています。このシャフト材料のFRPへの移行による軽量化が、ゴルファーの速いスイングを可能としました。速く振れれば、当然、飛距離に良い結果をもたらすことができます。