機械ではなく手づくりで思いを込める

 3カ所の工場で作業するスタッフの働きぶり、仕事へ立ち向かう姿を見せていただきました。老若男女、多くの従業員の気構えをこれだけひしひしと感じられる会社は、貴重な存在といえるのではないでしょうか。

 ここまで紹介しました全ての工程で熟練した技が必要です。例えば、帽体の厚さの検査にしても、目視で厚みの違いにアタリをつけられる目利きになるのに、数年かかると聞きました。各担当者が、「これは自分しかできない」という作業に対する自信と誇りを持つことができれば、面倒な作業も厳しい確認検査も「やってやろう!」という気持ちになるのだと思います。

 上記の工程の説明ではアゴひも取り付け工程でしか触れませんでしたが、帽体成形工程においてもアライ社内の認定制度があり、有資格者のみが従事する作業と決まっています。特に、独自の認定制度を制定するのは、やる気、責任、高いテンションの維持にもつながり、従業員それぞれが自分の意志でレベルアップしたいと努力する集団を形成する上で、とても効果的な方法だと思いました。

 さらに、普通の企業では定年にあたる年齢になっても、多くの方が働き続けます。匠の技は年齢を重ねなければ習得できないからです。離職率が大変低いと伺いましたが、当然のことと納得できました。

 伝統を守りながらも、最先端のテクノロジーを用いてより高い安全性をどこまでも追求する。あえて機械ではなく、手作りで作り手の思いを込め、効率は考えない。その泥臭さく誠実な態度こそが、ものづくりを支える日本人のすばらしさであると実感しました。

(記事中の写真:アライヘルメット提供)