6.組み立て

穴あけ・ヘリ巻き工程

 完成した帽体に、シールド取り付け穴、ダクト穴、通気孔などの穴を開けます(図14)。次いで帽体のふちや窓の周囲などに、ゴム製やビニール製の“ヘリ”を巻き付けるヘリ巻き工程があります(図15)。その後、いよいよライナーを押し込みます。

図14 穴あけ工程
図14 穴あけ工程
ほんの少しずれたたけでも、ここまで造ってきた物が廃棄処分になります。
図15 ヘリ巻き工程。ゴム製やビニール製のヘリを丁寧に巻き付けます
図15 ヘリ巻き工程。ゴム製やビニール製のヘリを丁寧に巻き付けます
ライナー装着工程

 アライこだわりの衝撃ライナーを手作業で帽体内部に入れていきます。まっすぐに押し込むのがコツですが、力を加えるだけでは入らず、匠の技が必要です(図16)。

 硬さが違う発泡スチロールが一体成形されているのが、アライヘルメットのライナーの特徴です。衝撃はへりに向かって広がるため、ヘリ部分が硬くなるよう工夫されていますが、入り口が狭い丸い帽体に、内のりギリギリの形状で勘合性の高いライナーをセットするのですから、向きを偏らせずにまっすぐ押し込むのがどんなに難しいか、想像していただけるのではないでしょうか。この作業の担当になると、皆さんたくましいからだに変身できるそうです。

図16 帽体内のりギリギリの形状に造ったライナーを装着
図16 帽体内のりギリギリの形状に造ったライナーを装着
アゴひも、シールド取り付け

 最後に、アゴひも、シールドベースなど、さまざまな部品を取り付けます。

 アゴひもは命を守る重要なパーツです。簡単に外れてはならないので、機械を使ってリベットでかしめます(図17)。アゴひもには、静荷重による負荷や動的荷重による衝撃を加え、伸びしろを計測する試験を実施します。アライヘルメット独自の認定制度を設けており、認定者のみが作業に当たります。

 シールドベース(取り付け部)を帽体に固定していきます(図18)。シールドの開閉時の動き、ロックの掛かり具合が適正となるよう、1つひとつ確かめながら作業します。

図17 アゴひも工程
図17 アゴひも工程
認定者が作業に当たる
図18 シールドベース取り付け工程。シールドの動きが適正となるよう、1つひとつ確かめます
図18 シールドベース取り付け工程。シールドの動きが適正となるよう、1つひとつ確かめます

 以上の他、アゴパッドや耳パッド、通気ダクト、その他細かいパーツを組み付けます。最後に「Arai」マークを貼ります(図19)。簡単な作業に見えますが、曲面の上に水平になるように貼らなければならないので、スキルが必要です。

図19 「Arai」マークの貼り付け。これも熟練の必要な手作業
図19 「Arai」マークの貼り付け。これも熟練の必要な手作業

 そして、最終検査です。ヘルメットの個々の質量はもちろん、内装はズレることなく取り付けられているか、シールドを適切に開閉できるかなどを確認します。SNELLラベルやその他の規格ラベル、最後に検査員の名前の入った検査ラベルを貼って終了です。作業票には各工程ごとの作業者の記録が残り、責任の所在が明確になります。

 こうして、1個のヘルメットが出来上がります。最終検査後、箱詰めされて出荷を待ちます(図20)。

図20 出荷を待つヘルメット完成品
図20 出荷を待つヘルメット完成品