2016年12月15日に満を持して配信が始まった任天堂のスマホゲーム「スーパーマリオ ラン」。配信開始より僅か4日で全世界4000万ダウンロード(DL)とアップルのApp Storeで最速の記録を打ち立てた(任天堂のプレスリリース)。一方で課金率は4%弱と予想より低く、売り上げも今のところ想定を下回ること、App Storeのユーザーレビュー評価平均が☆2.5と低めなことも相まって任天堂の株価は19日までに5日連続で下落し、一時前週比8%安まで下がった。果たしてスーパーマリオ ランは失敗なのか。スマホアプリの専門家の意見を聞いてみよう。(編集部)

 任天堂のスマホゲーム第一弾である「スーパーマリオ ラン(Super Mario Run)」。なぜ任天堂は「ラン」を選んだのでしょうか?

イラスト=闇雲
イラスト=闇雲
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 結論から書きましょう。任天堂は好きでスーパーマリオ「ラン」にした訳ではありません。マリオをオートで走らせるしか、スーパーマリオを表現できる方法がなかった、と考える方が自然です。この記事では任天堂の視点で「なぜスーパーマリオ “ラン"」になったのか説明していきます。結果として「スマホゲームの限界」が見えてしまうのです。

任天堂は苦渋の選択でマリオを走らせた

 「スーパーマリオ」をスマホに移植する開発にあたり、任天堂は当然のように色んなパターンのを試したはずです。その試作の課程を勝手に想像してみましょう。でもたぶん、そこまで外れてはいないはずです。

 「スマホで任天堂クオリティーのマリオを実現せよ」。このような指令が下ったとき、世界最強の経験値を持つ任天堂のゲーム開発チームは余裕綽々だったはずです。「我々ならほかのスマホゲームより100倍面白く作れる」と。なぜかというと、家庭用ゲームに比べると、スマホゲームは明らかにレベルが低いからです。

 最初に考えたのは画面を縦に使うか、横に使うか。どちらがよいか? 彼らはこう考えたはずです。

「当然スマホを横画面にしてプレーするべきだ。それこそがマリオだからね」。

ここで最初の問題が発覚します。スマホにはコントローラーがない。ならば、画面上にバーチャル・コントローラーを設置しよう。しかし、ここで気付くわけです。あれ? 何か違うぞ…。

本来の「スーパーマリオ」は横画面が当たり前
本来の「スーパーマリオ」は横画面が当たり前
(出所:任天堂公式YouTubeプレー動画からキャプチャ)
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横画面で発覚するバーチャルコントローラー問題

 スマホ版のマリオがなぜ横画面にできなかったのか?その理由が端的に分かるスマホゲームがあります。「Lep's World 3」(nerByte社、無料+アプリ内課金)というスーパーマリオ風のゲームです。見れば分かるように、このゲームはスーパーマリオそっくりです。それ故に、このゲームを見ていくと、スマホ版のマリオがなぜ横向きにならなかったのかが見えてきます。

nerByte社の「Lep's World 3」
nerByte社の「Lep's World 3」
(出所:Lep's World 3の画面ショット)
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 画面を横向きにしたスマホにスーパーマリオ風のゲームを実装するとなにが起こるのでしょう? 実はタップに機能を持たせるために必ず設置しなければいけないものがあるのです。そう、バーチャルコントローラーです。

 Lep's World 3では全部の4つのバーチャルボタンが設置されています。画面の左側に「前」と「後ろ」、右側に「ジャンプ」と「武器」。合計でたった4つのボタンです。これを30年前の初代ファミコンのコントローラーと比べてみましょう。

初代ファミコンのコントローラー
初代ファミコンのコントローラー
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