2016年12月15日に満を持して配信が始まった任天堂のスマホゲーム「スーパーマリオ ラン(Super Mario Run)」。配信開始より僅か4日で全世界4000万ダウンロード(DL)とアップルのApp Storeで最速の記録を打ち立てた(任天堂のプレスリリース)。一方で課金率は4%弱と予想より低く、売り上げも今のところ想定を下回ること、App Storeのユーザーレビュー評価平均が☆2.5と低めなことも相まって任天堂の株価は19日までに5日連続で下落し、一時前週比8%安まで下がった。果たしてスーパーマリオ ランは失敗なのか。スマホアプリの専門家の意見を聞いてみよう。(編集部)

 「スーパーマリオ ラン」、面白いですね。好き嫌いは分かれるかと思いますが、スマートフォン(スマホ)で人気のランゲームにマリオらしさをきちんと落とし込んでいますし、上下に広い縦画面を生かしたステージ構成は見事と言うほかありません。全ての要素を考えれば20時間弱は遊べるよくできた商品です。

(イラスト:闇雲)
(イラスト:闇雲)
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 しかしApp Storeのレビュー平均点数は2016年12月23日時点で日米ともに「☆2.5」と低い水準にとどまっています。また、たった4日で4000万という記録的なダウンロード(DL)数を稼ぎましたが、当初予想よりも圧倒的に売れて(課金されて)いません。アプリ調査会社の米App Anieeの推計よると販売開始から3日でのダウンロード数は3700万DL。売上げはおよそ16.5億円(1400万ドル)です(App Anieeのブログポスト:「スーパーマリオラン、公開3日で1400万ドルの収益」)。海外の調査会社の幾つかが事前に出していた50億円から80億円という1カ月後の売上げ予想を鑑みると、想定よりペースは遅いと言わざるを得ません。

 品質が高いはずのゲームなのに評価が低いこと、膨大なダウンロード数の一方で予想より少ない売上げ…。これらを受けて、ネット上では早くもスーパーマリオ ランの成否が議論されています。この原稿の依頼もまさにそれがテーマでした。しかし、私から見るとこれは不思議な現象です。なぜなら、マリオランの成否を論じるには、まだいささか早いのです。

そもそも、買い切りゲームは「アリ」なのか?

 スーパーマリオランは最初の3ステージを無料体験したあと、1200円で残りの全ステージを購入する「体験無料」の形式を取っています。アプリに対して1回だけ課金が発生し、以後は自由に遊べる「買い切り」の仕組みですね。

 スマホゲームでは基本無料(F2P=Free to Play)タイプが収益の面で最も有利と言われています。F2Pタイプはゲームがヒットしたら、ガチャや時間短縮アイテムを何度も購入してもらえるので売り上げは青天井です。一方、買い切り方式はいったん購入したら課金は終了ですから収益に天井ができてします。実際、App Storeの売上げランキングを見ても、1位から200位までほぼ全てF2Pタイプが占めています。ちなみにこうした課金の仕組みについては手塚武さんの記事「スーパーマリオ ラン」はなぜ買い切り1200円なのか」が詳しいので、そちらをご覧ください。

 マリオランへは、F2Pタイプが有利だと分かっている市場にあえて買い切り方式のゲームを出した。案の定売り上げが低い、だから失敗だという批判意見もあります。実はこれも違います。最近では買い切り方式のゲームも利益をもたらすと知られているのです。