新年、明けましておめでとうございます。

 2015年も日経テクノロジーオンラインをご愛読いただきありがとうございました。技術者の皆様を応援し、新たな産業の発展に貢献するというコンセプトの下、2016年も皆さまに役立つコンテンツを鋭意、提供して参ります。

 さて、2015年は皆様にとってどのような年となったのでしょうか。日経テクノロジーオンラインの多様な情報発信を通じて、個人的に感じているのは産業や企業、ビジネスといったものを“再定義”する時代が始まったということです。多くの製造業が成熟しつつある中で、いわゆる次の“メシの種”を生み出すために、競合企業、異業種が入り乱れて様々なコトづくりが顕在化した1年だったのではないでしょうか。

 印象的だったのが、これまで自前主義だった大手製造業が脱自前主義に向けて、舵を切り始めたことです。大きなインパクトを与えたのは、何と言ってもトヨタ自動車による人工知能への巨額な投資の決定でした。

 人工知能を用いた自動運転技術は自動車業界を超え、多くの異業種を巻き込んで開発競争が繰り広げられています。自動運転車が現実のものとなれば、“自動車”という物理的なものが再定義され、消費者の抱いている“所有して利用する移動体”という概念を一変してしまうかもしれません。

記者会見で登壇したトヨタ社長の豊田章男氏(右)と、新会社のCEOに就任するGill A. Pratt氏(左)
記者会見で登壇したトヨタ社長の豊田章男氏(右)と、新会社のCEOに就任するGill A. Pratt氏(左)
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 こうした状況に危機感を持つトヨタ自動車は、人工知能の研究開発拠点となるTOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)社を米国シリコンバレーに設立し、2020年までの5年間に約10億ドル(1ドル=120円換算で約1200億円)を投じる計画です(有料会員向け関連記事)。

 加えて、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)のコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)および米Stanford Universityのスタンフォード人工知能研究所(SAIL)と、人工知能に関する研究で連携し、5年間で合計約5000万米ドルの予算を投じると発表しています(関連記事)。

 最近では、「ディープラーニング」など機械学習の応用技術に強みを持つベンチャー企業であるPreferred Networks(PFN)に10億円を出資することを明らかにしました(関連記事)。2016年1月に米国で開催される展示会「2016 International CES」(2016年1月6~9日)で共同開発の成果を発表するとしています。日経テクノロジーオンラインでは、もちろん速報をお届けする予定です。CESでは、自動車メーカーや自動車部品メーカーが多数参加し、自動運転に関する発表が相次ぎそうです。

 PFNにはこのほか、ファナックが2015年9月に9億円を出資しており、大手製造業が自前主義から脱却し、新たなパートナーとの提携を欲していることが良く分かる事例といえるのではないでしょうか。