前々回前回では、Volvo社のリマニファクチャリングが、さまざまな“つながる”を実現していることを紹介したが、インダストリー4.0の解説によく登場するセンサーや通信技術に関しては全く触れなかった。前述の通り、インダストリー4.0ではつながるビジネスモデルの構築が重要であり、センサーや通信技術は、あくまでそのビジネスモデルを強化・加速するための道具だからである。

 では、Volvo社のリマニにおいてセンサーや通信技術を導入するとどのような強化が可能だろうか。まず考えられるのは、リマニによって実現した長期間にわたる顧客との接点というつながりを、センサーや通信技術で補うことで、顧客への価値提供をさらに高められるということだ。

 現状のVolvo社のリマニでは、顧客の車両の定期メンテナンス、もしくは車両の故障発生時にコアを回収している。これに対して、センサーや通信技術によって顧客や車両の稼働状況を把握することができれば、修理やコアの回収タイミングをうまくずらすことができる。例えばセンサーによって、エンジンの利用状況をリアルタイムに監視し、これまでのコアから得られた摩耗・故障情報と組み合わせて車両が故障する前に適切な修理を実施する、コアとして適切な品質状態のときに回収を促す、といったことが期待でいる。

 顧客にとって突然の故障はもっとも避けたい事態。車両の未稼働時間をうまく使って修理やコア回収することを顧客に提案できれば、ダウンタイムはさらに短くなる上に、故障前に修理することで顧客の支出も抑えられる。正規販売店としては顧客にアプローチする絶好の提案材料になり、顧客とのつながりも強化できる(図4)。現時点でVolvo社はセンサーや通信技術を使ってリマニを強化するという活動には着手していないが、今後つながる技術と組み合わせることでリマニは確実にビジネスモデルとして強化でき、リマニが事業として拡大するだろう。

図4 インダストリー4.0によるリマニの強化
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図4 インダストリー4.0によるリマニの強化