前回説明したモジュール戦略の考え方は、ホワイトカラーの生産性、特に創造生産性の向上に活用できる。その取り組みが、弊社が提唱している日本型のイノベーション、「和ノベーション」だ(図3)。

図3 「和ノベーション」とは
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図3 「和ノベーション」とは

 この言葉には、日本らしさを意味する「和」だけでなく、対話の「話」、仲間の「輪」という意味も含んでいる。和ノベーションでは、まず企業や個人が現場で培ってきたさまざまなノウハウ、技術や知恵、ツール、考えの枠組みなどの「暗黙知」を、モジュール=「ありもの」にする。つまり形式知化することからはじめる。その際、そのモジュール(能力モジュール)をだれもが理解できる言葉で表現していくことが重要だ。

 次に、見える化された異なる能力モジュールを持った仲間同士をつなぎ、「対話」によって仲間の「輪」を広げていく。さらに、かつての大部屋やタバコ部屋で行われていたような密度の濃い「対話」の場も作り、部門や企業、あるいは業界を超えて、人の「輪」、仲間の「輪」を広げていくのだ。その上で、互いの知恵や能力を組み合わせれば、革新的な取り組みが可能になる。欧米とは違うある意味、ボトムアップ色の強い取り組みだ。

 個別の能力を磨く、それを交流させる、能力を再編集する、新しい価値を届けるなど、人それぞれに合ったやり方でみんなが活躍することにより、異次元のスピードで新しい価値が生み出される。各人がゼロベースで属人的に取り組むのではなく、既に取り組んだ人の知見や経験を活かして積み上げていけば、無駄な重複はなくなる。発射台を高めた状態で価値創出をはじめることで、企業の創造生産性はもっと高くなるはずだ。

 現場に多種多様な能力モジュールを用意すれば、みんなが使いたくなるのは間違いない。活用が始まり、しばらくすると、新たな価値を提供し続けていくために足りない能力モジュールも見えてくる。新たな能力モジュールが欲しくなるのだ。このサイクルが回り始めると創造生産性が一気に高まる。