日本の会社員が時間当たりに生み出しているGDPは欧米の2/3――。これは、日本人の働く時間が長い割に、生み出している付加価値が低いということを意味している。最近では世の中の進化のスピードが増しているにもかかわらず、日本の強みである現場の改善や創意工夫は逆に減っているという声もよく聞く。いったい日本の強い現場はどこにいってしまったのだろうか。

日本企業の課題、創造生産性の向上

 実際、ものづくりの現場を見てみると、人々は目の前の課題に忙殺され、新たな挑戦ができずにいる。自らの仕事の期限が迫るも、課題にどうアプローチすればいいのかが分からないケースさえある。とりあえず我流でやってみるが、試行錯誤の連続で時間や手間がかかり、必死に取り組んでもなかなか満足のいくレベルに到達しない。高齢化、匠の引退ともあいまってノウハウが伝承されず失われつつあるのだ。

 しかも、縦割りの慣習や組織のタコツボ化のせいで、足並みも揃わず重複・相反する作業が少なくない。結果、現場は時間的にも心理的にも追い詰められ、挑戦へのモチベーションがなくなるという悪循環に陥っている。

 世界を見渡すと、米Amazon.com社、同Google社、同Uber Technologies社、同Tesla社、同NVIDIA社など、業界の垣根を超えて革新的なさまざまな製品・サービスを生み出している会社が台頭している。新たな価値を生み出すスピードでの競争も激しくなるばかりだ。

 そんな中で日本企業が勝ち抜いていくには、足元への対処に追われて挑戦を始められない悪循環から抜け出し、挑戦に満ちた良循環へと移らなければならない。そのためにいったい何をすべきだろうか。

 私は、ドイツVolkswagen(VW)社や同Mercedes-Benzといった自動車メーカーを中心に大きな成果を上げている、「モジュール戦略」が参考になると考えている。この戦略は、製品を効率的かつスピーディに生み出すための手法を取りまとめたものだが、企画・営業・マーケティングなどで働くホワイトカラーの生産性向上にも活かせることが数多くある。