前回は、自動操縦のモニターを怠ったがために発生した事故を紹介した。ミスを責めるのではなく、使いやすいキカイを作ること、ヒトにミスを起こさせない環境を作ること、問題が起こっても致命的な状態に発展しない仕組みを作ることが重要であり、そのためにも過去から学ぶべきである。今回も引き続き、実際の航空機の事故事例から自動運転の実現に向けた課題を考察したい。

ケース2:ヒトはキカイを使いこなすべし
 1994年、台湾の中華航空140便(Airbus社製A300-600R)は、名古屋空港へ着陸しようとしていた。滑走路に正対した着陸進入降下中にパイロットが誤って、着陸を中断して上昇する「Go Around Mode」のスイッチを押してしまった。そのため、自動操縦がエンジン出力増大と機首上げ操作を行い、航空機は上昇を始めようとした。パイロットはGo Around Modeの解除を試みるも解除できなかった。また、着陸進入の継続を意図していたパイロットは手動で機首下げ操作を行い、降下を試みた。

 しかし、自動操縦が機首上げ操作をしていることにパイロットは気がついていなかった。つまり自動操縦は機首上げ、パイロットは機首下げという2つの異なるインプットが同時に航空機になされていた。その後パイロットは着陸中断と上昇を決断するも、自動操縦が最大限の機首上げ操作を行なっていたため、航空機は40°を超える異常な機首上げ姿勢に至り、その後の回復操作を効果的に行なえなかったことから失速・墜落した。

図3:ヒトはキカイを使いこなせなくてはならない
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図3:ヒトはキカイを使いこなせなくてはならない