クルマより一足先に自動化が進んだのが航空機である。航空機の自動操縦は、パイロットである「ヒト」の負荷を減らし、より安全に航空機を飛ばすために何十年も前から存在し進化している。設定高度までの上昇や降下と高度の維持、進行方向の維持、速度維持のためのエンジン出力の調整機能などの基本的な機能や、登録した経由地点(Way point)を順番にたどって飛行する機能、着陸の際に地上から発せられる電波の誘導により滑走路に向けて降下していく機能など、この「自動操縦」というキカイにはさまざまな機能が搭載されている。

 航空機においてこのような自動操縦の役割がいち早く拡大した背景の1つには、キカイが操縦することに対する阻害要因が少ないことが挙げられる。具体的には、航空機同士の間隔は管制官により維持されていること、突然現れる歩行者がいないこと、見通しの悪い交差点も無いことなど、キカイの判断を難しくするような要因がクルマに比べ少ない。また、パイロットはキカイのマネジメントも含めたトレーニングを受け、定期的なチェックを受けていることも、キカイによる操縦が進んだ背景にある。

最終的な責任はヒトに

 しかし、出発地で到着地を入力したら、あとは自動操縦が勝手に飛ばしてくれるわけではない。飛行中も、その時その時に管制官からコースや高度の指示があり、パイロットは空域の気象状況も踏まえて揺れないコースを選んだ上で、それに基づいた指示をキカイに出して自動操縦機能を作動させている。そして自動操縦というキカイが飛ばす航空機を監視する責任は、パイロットが持っている。指示した高度やコースを維持しているか、不具合はないかを監視し、必要があれば自動操縦を自ら解除し手動で飛ばす。最後はパイロットというヒトが責任を持って飛ばすこととなっているのである。従って、ヒトがキカイをマネジメントしつつその飛行状況も監視するため、高度に自動化が進んでいるとはいえ自動運転のレベル2と同等である。

 自動操縦機能は何十年も前から存在し、新しい機種の開発と共に進化してきた。それにより、パイロットの役割は、直接航空機を飛ばすというものから、自動操縦を通じて航空機をマネジメントするものへと変化してきたとも言える。その過程において「キカイそのものは壊れていない」にも関わらずキカイの操作を誤ったがゆえに危険な状態に陥り事故に至った経験もしてきた。その経験を踏まえ、キカイを進化させ、ヒトとキカイの関係をよくし、ヒトによるキカイのマネジメント能力を高めてきた。クルマの運転支援機能も今後進化を続け行くのは間違いないが、その過程において直面するであろう課題に対して、航空機における自動操縦の経験から学べることがあるはずだ。