前回に引き続き、次世代型ビジネス・インテグレーターが最低限具備すべき思考の枠組みを紹介していこう。

枠組みその3:秀逸な技術よりも必要な技術を調達せよ
 前回紹介したセブン銀行やコマツの事例にも当てはまるが、技術ありきではなく、ビジネスモデル・製品設計ありきで必要な技術を補完するという発想が、事業成功に何よりも強く作用する。前々回に論じたように、優れた技術・ベンチャー企業に出会ったとしても、希少性・限定性の罠に陥ってはならない。

 以前、システム開発を支援していた際、ユーザー・インターフェースの設計会社を探していたことがある。ベンチャー企業数社とコンタクトしたが、そのうちの1社は誰もが知るサイトのデザインを数多く手掛ける著名な企業だった。正直、彼らの実績・体制・開発手法に惹かれた。しかし、事前に機能要件を明確に定義していたため、より安価で小回りが利く別の中堅ベンチャーを選定できた。もし、機能要件を十分に定義していなかったら、換言すれば何を外部ベンダーに求めるかが不明確であったならば、費用・成果の両面で不満の残る結果になったことだろう。

 とかく大企業になると、技術者が心くすぐられるような面白い技術を持つベンチャーや、マスコミでよく取り上げられるベンチャーと提携した方が、経営の受けが良く、社内稟議が通りやすいのも事実だ。やすきに流されることなく、事業構想を具現化する上で何を補完したいのか、それを満たす最適な提携先なのかといった視点を忘れてはならない。もちろん優れた技術を活用してビジネスモデルを進化させることができれば良いが、提携先の技術を使いたいがために事業構想を修正した結果、ビジネスそのものが失敗に終わってしまっては元も子もない。