技術の高度化・複雑化が進み、市場がグローバル化する中、大企業といえども1社だけで囲い込んでビジネスを成功させるのは難しくなった。技術面でも、オープン・コラボレーションのような動きが活発化している。こうした事業環境下においては、企画から開発、調達、製造、マーケティング、アフターサービスに至るまでのライフサイクル全般にわたって、どこに自社としての事業の中核や強みを見出し、何を外部から調達して事業を拡大していくかを見極められるビジネス・インテグレーター機能が必要となる。今回から3回にわたり、そうした次世代のビジネス・インテグレーター機能に求められる役割と機能について解説する。

ベンチャーとのコラボなくして生き残りなし

 2017年1月の日本経済新聞に、日本の経営者が今後10年間で最も有望な成長産業として「IoT(Internet of Things)」と「AI(人工知能)」を挙げているとの記事があった1)。その理由は「製造現場の生産性向上」「新しい市場の創出」だった。現下のデジタル技術ブームを考えれば当然の結果であり、その関心の高さを改めて確認した。ただし、そのデジタル技術を含めた、昨今の技術調達には変化の兆しが現れてきている。

 わが国の製造業は、毎年のように売上高における研究開発費率を高めており、要素技術の磨き込み・応用技術の開発などに注力してきた。にもかかわらず、開発資金の豊富な大企業であっても、知的財産ライセンスの支出は増加の一途をたどり、かつその収支は悪化傾向にある。

 一方、世界的なカネ余りもあり、2、3年前あたりから日本のベンチャー企業に再び億単位の資金が流入するようになった(図1)。その資金は、豪華なオフィスや派手なイベントに費やされることなく、愚直に研究開発資金にあてられ、ベンチャーの技術力がますます高まるといった効果をもたらしている。その甲斐あって、大企業とベンチャーの事業提携件数は飛躍的に増加。大企業とは対照的に、ベンチャー企業は知的財産ライセンス収支を改善させてきている。

図1:わが国の技術開発・調達を取り巻く環境の変化
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図1:わが国の技術開発・調達を取り巻く環境の変化
大企業においては、研究開発費の占める割合が増えているが、知財ライセンスの収支は悪化している。一方、ベンチャー企業を見ると資金調達額がここ数年増え続けている。

 これらの事象が示すのは、かつてのように大企業が豊富な資金・人材を背景として圧倒的な技術優位性を持つ時代の終焉である。いまや大企業といえども、機動力・発想力に優れるベンチャーとのコラボレーションなくして、デジタル技術全盛の今を生き抜くことが難しい。

■参考文献
1)『今後の有望分野「AI」や「IoT」』、日本経済新聞、2017年1月16日.