「(DNCは)今後の進化次第では人では思いもつかないようなアルゴリズムを発明できる可能性もある」

 なぜDNCの登場でそのような可能性が出てきたのか。ぜひ日経Roboticsの記事をお読みいただき、お確かめいただければと存じます。CNN(convolutional neural network)をはじめとしたディープラーニング技術の多くは、これまで画像認識や音声認識など主にパターン認識の領域で成果を出してきた訳ですが、最先端の研究では「シーケンシャルなアルゴリズムを生み出す」ということの萌芽が出てきているのです。

 筆者は日本の大手企業の技術者に取材する中で、最近、複数名から気になる言葉を聞きました。「ディープラーニング技術は既にコモディティ化している」という言葉です。

 その技術者は「CNNを使った物体認識」のことなどを指して、そう発言したのかもしれません。ディープラーニング向けのフレームワークやクラウドサービスも充実してきており、CNNを単純に物体認識や検出に使うだけであれば、実社会の商用サービスでも既に採用されていることもあり、確かに普及しつつあるといえるでしょう。

 しかし、上記でもご紹介したように、今、ディープラーニング技術は単にパターン認識に留まらず、より広範な応用を目指して、世界中の研究者が日々、アルゴリズムを数式レベルで磨いています。世界の動向を真摯に追わずして「コモディティ化した」などと思い込むことは、日本企業、そして日本社会の将来にとって憂慮すべきことだと筆者は考えます。

 筆者は、人間並みに汎用的なAI、いわゆる「AGI(Artificial General Intelligence)」が出来上がるまでには相当な時間が掛かるだろうと考えています。ただ、「AGIが実現するかどうか」に関係なく、そして「ディープラーニングでAGIが実現できるかどうか」に関係なく、エンジニアリング上、非常に有用な成果がディープラーニングの領域で次々と出てきているのは確かです。

 「人間を超えるかどうか」などという議論に惑わされることなく、世界のAI技術の動向、そしてロボット技術の動向を占うために、ぜひ日経Roboticsの購読をご検討いただければ幸いです。

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