「今までにない透明材料を用い、高断熱窓の実現を目指している」(J-TECH STARTUP審査員)。そんな企業が、京都大学発の技術ベンチャー、ティエムファクトリ(代表取締役 山地正洋氏)だ。同社が開発したエアロゲル素材「sufa」は、低エネルギー住宅の切り札になる可能性がある。

†J-TECH STARUP銘柄を表彰する「J-TECH STARTUP SUMMIT 2016」が東京・浅草橋で12月7日、13時~開催されます。ティエムファクトリ山地氏も講演します(詳細はこちら)。

sufaの製造工程
sufaの製造工程

 寒い冬の日、暖房をつけていても窓からの冷気で部屋がなかなか温まらない。そんな経験はないだろうか。

 この問題を解決できる可能性がある素材が、ティエムファクトリのエアロゲル素材「sufa(スーファ)」だ。グラスウールやウレタンフォームなどの断熱材と比べても断熱性が高い上、透明であるため、ガラスのように利用できる。しかも、非常に軽い。

 単層の板ガラスが6W/m2・K程度、Ar注入したペアガラスが1~3W/m2・K程度であるのに対して、sufaをはさんだペアガラスでは0.53W/m2・Kを達成できる。同じ性能をガラスで得ようとする場合、断熱用に金属膜コーティングをした板ガラスを5枚使い、間にArガスを封入した4層を置く必要がある。もちろんこの窓は重いことに加え、sufaをはさんだ窓と比べて8倍近い価格になるという。

 実はこの素材、1990年代にアメリカ航空宇宙局(NASA)が航空宇宙用途で開発されたもの。ただし、高価であるため、一般には普及していない。高価なのには、(1)設備の初期費用、維持費用ともに高額な超臨界乾燥装置を使う、(2)洗浄工程により廃水が発生する、という2つの理由がある。sufaは常温で乾燥し、洗浄工程がないため、従来の60分の1の低コストを実現できた。同社は、これまで透明な断熱素材がなかったために断熱が難しかった窓に、この素材を適用していくことで、低エネルギー社会実現を狙うという。

  ■会社概要■
会社名:ティエムファクトリ株式会社
本社所在地:東京都・江東区
事業内容:超軽量、高断熱、汎用透明断熱材エアロゲル「sufa(スーファ)」の研究開発、販売
代表者:代表取締役 山地正洋
設立:2012年11月