「優れたロボット義足の普及を目指しており、社会的意義が大きい」

 J-TECH STARTUPの選定委員からそう称えられたスタートアップ企業が、義足メーカーのXiborg(代表取締役 遠藤 謙氏)だ。2020年東京パラリンピックの陸上競技で健常者の記録を抜き、“義足をしている人=障害者”という思い込みの変革を目指す。

†J-TECH STARUP銘柄を表彰する「J-TECH STARTUP SUMMIT 2016」が東京・浅草橋で12月7日、13時~開催されます。Xiborgの遠藤氏も講演します(詳細はこちら)。

左から「競技用義足」「ロボット足部」「ロボット膝継手」「ロボットリハビリ機器」
左から「競技用義足」「ロボット足部」「ロボット膝継手」「ロボットリハビリ機器」

 “障害者”という概念をなくす――。無謀とも思えるそんな夢が、Xiborgのミッションだ。身体の一部の機能が失われることでなぜ、「障害者」と呼ばれるのか。これに対して遠藤氏は「実は今の技術が未熟だから」と言い切る。「もし、人間の身体を本質的に置き換えられる技術があれば、障害という概念はなくなる」というのだ。

 この考え方はメガネを考えれば理解できる。かつて、目の悪い人は“障害者”であり、周囲の補助なしには生活できない人だったはずだ。光学レンズの技術によって、健常者と同等の視力を得られるようになった。むしろ、現在においては「おしゃれ」のためにメガネをかけている人が登場するほどだ。

 Xiborgでは、現在、陸上競技用の義足の開発に注力している。まず、2020年の東京パラリンピックでトップ選手に使ってもらい、健常者に勝る記録で優勝をめざす。これにより、「身体の一部の機能が失われている人=障害者」という方程式を崩すことを狙う。

 並行して、誰でも使えるロボット義足も開発している。現在の義足と異なり、アクチュエーターを内蔵しており、能動的に動くもので、人間の体の機能をより広く代替できる。これにより健常者との差をなくす。その第1歩として、ソニーCSLと共同でロボット義足を開発し、2016年10月にスイスで開催された「サイバスロン」という競技会に参加した。2017年からは実際生活環境下での臨床を開始する計画だ。

 ただし、遠藤氏は「義足メーカー」という事業だけでは、大きな売り上げや利益は上がらないと考えている。むしろ、この技術が一般的となり、これまで経済活動に貢献できなかった高齢者、障害者が労働するような社会ができあがれば、冨の生産が期待できなかったところから生産的な活動が生まれ、社会全体が豊かになることを期待している。

■会社概要■
会社名:株式会社Xiborg
本社所在地:東京都・渋谷区
事業内容:ロボット技術を駆使した義足やリハビリ機器の開発
代表者:代表取締役 遠藤 謙
設立:2014年5月

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