2017年はAmazon EchoやGoogle Homeに代表される音声インタフェース、つまりマイクの知能化に注目が集まった。次に来るのは、イメージセンサーの知能化だろう。実際、Amazon社はカメラ付きのEcho、「Amazon Echo Look」の販売を始めている。さらに、お掃除ロボット、自動運転車、コミュニケーションロボットなど、イメージセンサーから出力される画像データを分析し、周囲にあるものを認識したり、人物を認識したりするシステムへのニーズが顕在化しつつある。

 この時代の到来を視野に画像処理向け集積回路「Advanced Intelligent Pixel Engine (aIPE)」を開発しているのが、パナソニック出身の技術者らが設立したArchiTekだ。aIPEを搭載したICをイメージセンサーとつなぐことで、画像を解析し、モノの種類を判定したり、モノの数を数えたり、モノまでの距離を測定したり、画像に移っている数字や文字列を認識したりすることが可能になる。「さまざまな用途に使える、安価な画像処理チップを世界に提供することで、賢い目が街中にあふれさせ、(ネットワークを介して)つながる時代を創る」(同社)ことを狙っている

†J-TECH STARUP銘柄を表彰する「第2回 J-TECH STARTUP SUMMIT」が東京・霞ヶ関で2月1日、13時~開催されます。ここでArchiTekの代表者も講演します(詳細はこちら)。

[画像のクリックで拡大表示]

 現在、画像処理を行うためには、GPUやCPU、専用ICを使うことになるが、どの種類のICにも課題がある。まず、GPUやCPUは回路が大規模でコストが高い。加えて、小さな電力で駆動することを想定した機器にとっては消費電力が大きい。一方、専用ICは消費電力とコストが低いが、用途が固定されるため柔軟性が低い。

 ArchiTekがaIPEで狙うのは、GPUやCPUと専用ICの間の領域だ。つまり、GPUやCPUよりもコストや消費電力が低く、専用ICにない柔軟性を兼ね備えたものだ。これは、大きく2つの工夫で成り立たせる。一つは、「座標変換や空間変換、色変換」「周波数変換」、「ラベリング処理」「トレース」を実行できる回路、これら以外の処理を行う回路をそれぞれ用意し、これらの回路をつなぎ合わせながら同時に実行できる仕組み。もう一つは、複数のアプリケーションからの処理を待ち時間が最少になるように、これらの回路に命令を送り込むハードウエアベースのスケジューラである。

 回路間は独自のインターコネクトで結ばれており、機能ブロックごとに増減可能である。つまり、目的に応じて、さまざまな性能のチップを作ることが可能だ。同社によると、FPGA上で距離測定アプリケーションを実行させたところ、米NVIDIA社の組み込みシステム向けプラットフォーム「Jetson TX」と比較し、8倍以上の性能を得られたという。

 ArchiTekは、aIPEを搭載したチップを提供するほか、aIPEのIPコア、これを活用するための高度なソフトウエアライブラリを販売していく計画である。aIPEを使ったシステムの受託開発も行っていく。既に、大手企業2社と、aIPEを使った自己位置推定および地図作成技術である「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」と「ディープラーニング」の研究開発を進めている。

[画像のクリックで拡大表示]

■組織概要■
会社名:ArchiTek株式会社
本社所在地:大阪府・大阪市
代表者:CEO/CTO 高田周一
事業内容:情報通信機器などの回路部品、プロトタイプ開発を行う研究開発メーカー
設立:2011年9月