連載趣旨

 長らく国の公共事業だった宇宙産業に、ようやく民主化の兆しが見えてきた。きっかけは、技術革新によって人工衛星の製造やロケットの打ち上げコストが激減し、誰もが宇宙を活用できる環境が整ってきたことだ。IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの最新の情報技術を、衛星画像などの宇宙由来のデータに適用することで、宇宙が新たな産業創出の場に生まれ変わろうとしている。

 宇宙活用の機運の高まりはもはや他人ごとではない。これまで宇宙とは全く縁のなかった分野の企業やベンチャー企業に参入のチャンスが生まれている。米国では、Elon Musk氏率いる米SpaceX社をはじめ、衛星写真をAIで解析する米Orbital Insight社など多数の民間ベンチャーが宇宙産業を主導している。国内でも、「宇宙産業ビジョン2030」を掲げる政府が異業種や中小企業の参入を後押しする。

 本特集では、宇宙発のデータ活用という側面に焦点を当て、準天頂衛星「みちびき」による高精度衛星測位の活用事例や、衛星が取得するさまざまなデータを活用するリモートセンシングがもたらす産業改革、新たな宇宙ビジネス創発に意気込むユニークなベンチャー企業の取り組みなどの事例を通して、リアルな産業としての「宇宙の未来」を描く。