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高安 篤史=コンサランス、サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
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高安 篤史=コンサランス、サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
 前回はIoT(Internet of Things)ビジネス設計をテーマに、[1]データの価値の進化と[2]バリューチェーンの作成について解説しました。今回は、[3]IoTの階層(レイヤー)の整理について取り上げます。

 皆さんは、IoTの分析を行う際にレイヤーを意識していますか?

 IoTには、データの取得から、最終的にユーザーへサービスを提供するまでに複数のレイヤーが存在します。これらのレイヤーを分けてIoTを捉えることにより、自社の強みやポジションが明確になります。ただし、実際のIoTには存在しないレイヤーや、レイヤーが統合されていて分離できない場合もあるので注意が必要です。

 表は、IoTレイヤーを8つに分けた場合の事例です。「自動車のドライバーの運転情報から安全指導、テレマティクス保険(クルマの運転情報を利用した保険料の算出)まで」を事例に取り上げました。また、表にはありませんが、全てのレイヤーに対してセキュリティーが関連します。

表●IoTの8つの階層(レイヤー)
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表●IoTの8つの階層(レイヤー)

競争のポイントは上位レイヤーに

 このように、IoTには多数の階層が存在するため、どのレイヤーの議論をしているのかを明確にしないと、話がかみ合わなくなります。また、ビジネス設計を行う際も、IoT全体を俯瞰し、自社のポジションをどの位置に置くのを検討する必要があります。

 ⑧のセンサーなどは、IoTの世界では利用数が莫大になります。ここは参入する企業も多くなり、必ずしも安心できる競争領域ではありません。また、従来は⑦も差異化のポイントになっていましたが、競争のポイントは上位レイヤーに移ってきています。

 ただし、④~⑥は一部のIoTベンダーの競争領域であり、標準化も加速していくと考えます。製造業といえども、①~③の領域においてユーザーへの価値を向上できるビジネス設計を行い、差異化する必要があります。

 特に、①のサービスの連携のレイヤーでは、これまでになかったサービスが創出されて自社の産業をまたいだ業務領域になると、他社との競争を回避できます。いわゆる「ブルーオーシャン」の世界に入ることになります。

 次回は、[4]IoTコンセプトの10のポイントについて解説したいと思います。