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高安 篤史=コンサランス、サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
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高安 篤史=コンサランス、サートプロIoT技術講師、中小企業診断士
 前回は、IoT(Internet of Things)を取り巻く「世界の動向」について述べました。今回は、「日本の各企業の動向」と「IoTへの取り組みの課題」について取り上げたいと思います。

 まず、日本の各企業の動向は、IoTはその関連する技術や応用範囲が広く、推進団体や標準化団体が多数あることなどから、IoTの導入に試行錯誤しているところが多い、というのが実情だと思います。

 総務省が発表した「情報通信白書」の「企業におけるIoTの導入:我が国企業におけるデータの利活用状況」の調査結果では、「新ビジネスモデルによる付加価値の増大」は、13.4%と非常に低い値となっています(図)。

 日本の現状を見ると、大手建設機械企業のようにIoTにおいて既に成功を収めている企業がある一方で、大半の企業はIoTを活用したビジネスの本質を見極め切れていません。特に、取り組みの大部分が技術的な内容になっており、ユーザーの価値視点に立ったビジネス設計(ビジネスモデルの作成)のノウハウが不足していると言わざるを得ないと思います。

 成功を収めているこの大手建設機械企業は、1990年代からユーザニーズをつかむためにIoTに関連したさまざまな戦略を打ちたて、ノウハウを蓄積してきました。IoTという用語は最近のものですが、「ユビキタスコンピューティング」や「サイバーフィジカルシステム (CPS)」などを通じた検討や個々の要素技術の発展を通じて今日があります。ユーザーの価値視点に立ったビジネス設計(ビジネスモデル作成)は即可能になるものではありません。何が課題なのか、どのような方法で進めればよいのかを1つひとつ検討する必要があります。

図●データ利活用調査「(平成28年版 情報通信白書から引用)
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図●データ利活用調査「(平成28年版 情報通信白書から引用)

 また、IoTでは会社に規模に関係なくキーロール(鍵となる役割)を担える可能性があるという認識の下、ビジネスチャンスと考えて取り組みを開始している中小企業やベンチャー企業が増えています。しかし、戦略や方針が不明確のままIoT化を推進するため、ムダな試行錯誤を繰り返している場合や、付加価値が生み出せないまま投資をムダにしていることも少なくありません。

 IoT時代では、製造業などが今後生き残るために、サービス化やコラボレーションなどを加速していかなければいけないとの認識はあるものの、難航している企業がほとんどかと思います。

 前回触れた世界レベルでのIoTは、ドイツの国策とも言える「Industry4.0」の「つながる工場」を前提にした標準化の推進や、欧米企業のビジネスモデルの創造など、まさに「第4次産業革命」と呼ぶにふさわしいイノベーション活動です。しかし、日本のIoT活動は、今後の日本の未来が危惧される状況と言っても過言ではないと思います。