ユーザーの負担を減らす逆転の発想、コストダウンを実現

 人間の手は握るときに力を入れ、開くときに力を抜く。一方、Finchは基本的にはずっとつかんでいる状態。力を抜いているときは握っていて、力を入れると開く、いわば逆転の発想となっている。物をつかむときだけ力を入れればいいので、ユーザーの負担を軽減できる。さらに重量は330gで、従来の電動義手と比べて3分の1程度と軽量だ。

 また、ソケットフレームに被せるサポータのポケットには、距離センサー(フォトリフレクター)が導入されている。筋肉の隆起をセンサーが検出し、隆起の大きさに応じて、ユーザーに合わせた指先の開閉を行う。

 従来の義手は、およそ150万円が相場といわれている。しかし、Finchはその10分の1程度となる15万円での提供を可能にした。

 コストダウンに成功した理由の1つは、3Dプリンターの活用だ。ソケットフレームとハンドの部分は3Dプリンターを用い、ABS樹脂で作られている。そして、もう1つの理由は3本の指を、全て同じサイズにしたことにある。3本とも同じ指にすることで同時生産が可能になり、コストダウンにつながる。また、もしも指が壊れてしまっても交換が容易になるため、メンテナンス性も高まるのだ。

 Finchは、試験販売による機能改善を何度も繰り返し、2016年11月に本格的な販売を開始した。シンプルだけども要所に機能性を盛り込んだ“第2の義手”。ユーザーにとって新たな選択肢の1つとなるだろう。