健常者でも乗りたくなる、スタイリッシュなデザインの「WHILL Model A」
健常者でも乗りたくなる、スタイリッシュなデザインの「WHILL Model A」
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 2015年の「グッドデザイン賞」で大賞を受賞し、今、大きな注目を浴びているパーソナルモビリティーが、この「WHILL Model A」だ。従来の車いすとは全く違ったこのパーソナルモビリティーは、「100m先のコンビニに行くのも諦める」という、1人の車いすユーザーの声から開発が始まった。

 車いすに乗っているということは、それ自体がネガティブに見られがちで、障害者は外に出ること自体を諦めてしまうようになる。健常者では気にならないような小さな段差でも、従来の車いすでは大きな障壁となり、行動を妨げることになる。こうした課題を解決し、「すべての人の移動を楽しくスマートに」することを目指し、WHILLは誕生した。

 その魅力は、大きく次の4つだ。(1)従来の車いすとは全く違ったスタイリッシュなデザイン、(2)四輪駆動で7.5cmの段差を乗り越えることができ、砂利道や芝生などの走行も可能な走破性、(3)24個の小さなタイヤを組み合わせることによってその場で回転することができる小回りの良さ、(4)「iPhone」アプリを通じた遠隔操作、である。

「人生が変わった」、利用する人からの声

 まず目を引くであろう、そのデザインについて、WHILLの営業・マーケティング2部 部長である杉山純一氏に話を聞いた。

「WHILLは、いかに車いすに見えないようにするかをこだわりました。そのため、タイヤを隠し、いすにも見えないようにしています。それを実現するために、アームの部分に注目がいくようにデザインしました」

 実際にWHILLを利用する人からは「人生が変わった」「生きている心地がする」といった声も聞かれ、外出をする人は3倍近く増えたという。

 現在、WHILLは代理店や提携店の拡大、介護レンタルがスタートするなど、その活躍の幅をどんどんと広げようとしている。ダンスパフォーマンスへの提供など、アートとのコラボレーションも行っている。

 これは「さまざまな切り口から『WHILL』に触れてもらうことで、車いすを使う人と触れてもらい、車いすを使う人の存在を当たり前に感じてもらうことができれば、健常者と障害者の距離は近づいていく」(杉山氏)という意図からだ。

 カッコいいデザインで、ヤバいテクノロジーが詰まったWHILL。「超福祉展*1」のコンセプトを体現したこのモビリティーが健常者と障害者の垣根を越え、日本中に広がって行く日も遠くないだろう。

WHILLの杉山氏。将来的には「モビリティが当たり前に走っている風景を作りたい。そのためには健常者の意識を変えることが重要」と語った
WHILLの杉山氏。将来的には「モビリティが当たり前に走っている風景を作りたい。そのためには健常者の意識を変えることが重要」と語った
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*1 正式名称は「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」(2015年11月10~16日開催)