聴覚障害向けが、さまざまな事業の可能性を開く
聴覚障害者向けの映像コンテンツバリアフリーを目指す「UD Cast」。映像に埋め込まれた“透かし”を識別し、サーバーからダウンロードした字幕データをセカンドスクリーンに配信するシステムだ。映画や放送番組の字幕や音声ガイドの制作を手掛けるPalabraが、メディアやコンテンツのバリアフリー化に取り組むNPO法人のメディア・アクセス・サポートセンターや、エヴィクサーと協力して開発した。
セカンドスクリーンは、スマートフォン(スマホ)、タブレット端末のほか、眼鏡型のウエアラブル端末(スマートグラス)でも対応可能になる。現在、セイコーエプソンを中心に国内メーカー4社(ほかにソニー、オリンパス、ブラザー工業)が対応システムの開発を進めている。今年(2015年)、国内主要映画配給会社(東宝、東映、松竹、KADOKAWA)の一部のシネコンで実証実験を行っており、今後さらに拡大を図るという。
端末や視聴の方法に課題は残るものの、汎用性が高く、今後の開発に大きな期待が寄せられる。例えば、字幕データが外部化されていることから、ロードショー後の地方展開や、単館上映やフィルムの貸し出しなどでも聴覚障害に対応しやすくなっている。
メディア・アクセス・サポートセンターと連携し、能などの古典芸能でも実証実験を行うほか、各種イベントでの映像、デジタルサイネージとのリレーションも可能だ。
Palabraはメディア・アクセス・サポートセンターと字幕データをアーカイブ化する事業にも着手しており、聴覚障害者への対応だけでなく、さまざまな事業の可能性も開けてきた。