「ちがいを楽しむ1週間。」をキャッチフレーズに渋谷・ヒカリエで開催された「超福祉展」。会場では連夜「Beyond Diversity」と題した一連のシンポジウムが開かれた。11月9日には、「Beyond limits」をサブテーマに、元アスリートで、現在はスポーツコメンテーター、指導者として活躍する為末大氏、A.T. カーニー日本法人会長で、東京の都市構想チーム「NEXTOKYO」を主導する梅澤高明氏をゲストに招き、人間の「機能拡張」のその先に、どんな世界、ライフスタイルがありうるのかを語り合った。司会は、シンポジウムのディレクションを手がけるタイムアウト東京の伏谷博之氏が務めた。

技術がスポーツのワクワクを生み出す

 まず、各ゲストから「Beyond limits」をテーマにしたショートプレゼンがあった。為末氏は「動き」と「デザイン」、そして技術が生み出す「ワクワク感」について語る。

 為末氏は、「私の人生の前半は、速く“動く”ことと、そのための体を作ることに興味」があり、それは「どんな形が合理的であるのか、デザイン的な思考へとたどり着く」ことと解説。それは人間単体の動きだけにとどまらず、生命進化全般にいえることではないかとも指摘した。イルカとサメに見られる収れん進化の例やフラクタル理論を挙げて、「生命進化も動きに適応してきた結果では」と語る。

為末 大氏。
為末 大氏。

 また、オスカー・ピストリウス選手(南アフリカの両足義足の陸上短距離選手。“ブレードランナー”の異名で知られる)やマークス・レーム選手(ドイツの片足義足の陸上選手。2015年には男子走り幅跳びでオリンピック記録を超える8m40cmをマークし話題となった)を紹介。ピストリウス選手が登場した際には「速いに決まってる、ずるいんじゃないの?」とSNSで言明して炎上したという。

「それは運動解析をした選手なら誰でも知っていることで、下腿部が軽く、アキレス腱の反力が強いほうが速いのは明確。両足がカーボンで軽くて反発力が強いなら速いに決まってるじゃんと、口に出しては言わないまでも、そう思った選手はたくさんいただろう」

 そして「いずれオリンピック選手はパラリンピック選手に負けることは間違いない、というのが競技に関わる人間の実感」で、そのことについて、決して批判的になるのではなく、逆に「すごいことが起こるんじゃないか、とワクワクした」と当時を振り返る。これは、「2020年にはパラリンピック選手でヒーローを生み出す」を目標に掲げた、Xiborgプロジェクトを始める際に一番に感じたことでもあるという。「自分の体を合理的に鍛えることはできたが、自分の足をデザインすることはできなかったわけで、しかし、パラリンピック選手はそれができる」(為末氏)。